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★ エム ナマエの公開日誌 − あれこれ出来事 思いはいろいろ −

■ 2009年3月9日から22日までの2週間
 いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。
 音声パソコンを入手した当時、ただのスケジュール表だったものが、いつか毎日の記録となっていました。筋力運動、万歩計、透析データに食事の記録。健康維持のためにも大切なこの習慣も始めてからもう20年。
 けれども、世間の皆様がされているようなブログとは違い、わざわざ読んでいただけるものではありません。ただ、2007年の8月12日から遊びで始めた十七文字が、季節や出来事のヘッドラインになるので、ここに紹介させていただいてきました。
 毎日の出来事。去来する思い。本当はひとつひとつ、丁寧な記事に仕上げたいのですが、イカサマ俳句にマヤカシ川柳。これら十七文字や日記の切れ端で、現在を生きるボクたちの暮らしを浮かび上がらせてみたいと思います。
 夏目漱石や永井荷風ならいざ知らず、ボクの日記なんぞ死んでみたって永久に披露されるチャンスなんて訪れるわけもなく、こうして自分に命のある間だけ、毎日の出来事や思いを粉砕して、かけらを集め編集して、ホームページに掲載し続けることにしたのです。
 さて、近頃ここいら最近の2週間。出来事あれこれ、思いはいろいろ。どうか、よろしくお付き合いください。
エム ナマエ


0309・月・
 13時、代々木山下医院にて副甲状腺エコー検査と採血。最近の採血データを渡す。山下医院はリニューアルされていた。検査が終わって空腹。人気の長崎チャンポンの店で、待望のチャンポんを食べたが、予想した以上にうまかった。満足、満腹で帰宅。
 いつもの透析。WBCでは日本は韓国に負ける。やはり、あの監督では、いざというときに勝てる試合ができないのだ。アメリカでの本戦が心配。NHKラジオ、真打競演では近藤重さんのアコーディオン漫談。野口雨上の「赤い靴」を観客と合唱。知られていない5番の歌詞では独唱して、いい味を出していた。
 透析中から何か食べたい気分。コボちゃんと買い物。マグロの刺身を買う。帰宅してテーブルに広げたら、ネコのキロンがたちまちお座りをして、当然ボクももらえるんだよね、という態度。ボクはネコと刺身を半分こして食べる。シャルドネの白ワインをあける。おかげで安売りの冷凍刺身が旨かった。
▲ チャンポンのスープに春の気配あり

0310・火・東京大空襲・砂糖の日・
 昭和20年、大空襲のあった空から花粉の絨毯爆撃。雨上がりで花粉が飛び回っているのだ。街はマスク怪人であふれていることだろう。
 世田谷で、収穫直前の蜂蜜満載のミツバチの巣箱を盗んだやからがいたとか。こういう犯罪がいちばん腹立たしい。
 午後、ささまちさんくる。コーヒーを飲みながら、いただいたタナカヨシタケのナマキャラメルを食べた。初体験。口の中で淡雪のように消えていく。リッチな気分。人気があるのも納得。ささまちさんに原画をお見せする。
 夕方から月刊『ラジオ深夜便』イラストレーション制作。談志師匠の新話の泉がBGM。面白い。ついつい夢中になって、仕事にならないのでいけない。ミッキー亭カーチスが出ているので、面白過ぎてもっといけない。21時半からは歌謡ドラマ。吉峰真琴脚本だから、リリシズムがあって格調高い。現実とファンタジーが交錯して、現代を生きる女性を浮かび上がらせていた。主人公の山下智子さんがいい。
 昼間の遊歩道、コボちゃんがカラスが大きなパンを落ち葉の中に隠すのを目撃。雀たちもその大きなパンを狙っていたのだ。そんな話をしながら、またまた白ワインとマグロの刺身で夜食。本日は別のスーパーで安売りをしていたのだ。ボクは山葵をたっぷりつけて。キロンはもちろん山葵抜き。
▲ 雨上がり花粉絨毯爆撃隊

0311・水・
 音声腕時計の調子が悪い。ケータイに「起きてください」と叫ばれて目覚める。
 午前9時半、童心社、池田編集長くる。絵本「いつもぶうたれネコ」の見本5冊をもらう。新しい本のインクの匂いは、いつも胸をわくわくさせてくれる。
 ホワイトデイの手紙を手書きで。ひとりひとりへ心をこめて。もちろん小さな絵もつけて。コボちゃんが封筒に入れて、駅前のケーキショップ、アルルカンからクッキーつきで発送依頼。
 月刊『ラジオ深夜便』イラストレーション制作。小さいカットはゆめぞうの天気占い。傘にてるてる坊主をぶら下げ、長靴を放り投げている。イラストレーションはゆめぞうの天気予報士。カタツムリとアマガエルと一緒に空の様子を観察している。ゆめぞうは別にして、カタツムリもアマガエルも、雨が欲しいのだ。
 いつもの透析でラジオから流れるテレビのニュース音声を聴いていたら、猿の歯磨きの話題。猿が人間の髪の毛を使って歯磨きをしているのだが、母猿が子猿に歯磨きの方法を教えているらしいのだ。猿だって、母親からちゃんとしつけられているのである。本日の話題の中心は、1985年、阪神タイガーズが日本一になったとき、道頓堀に投げ捨てられたケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダース人形がヘドロの中から救助されたというニュース。大阪市民は大騒ぎ。この事件以来、近畿地方にはあまりよいことがなく、これをカーネルサンダースの呪いとされていた。そういえば、人形が沈没してから、阪神タイガースも日本一にはなれていない。大阪にカーネル神社を建立しようという企画もあるとか。まあ、阪神地方には、ぜきとも元気になって欲しい。
▲ 寒いねと思う間に春がくる
▲ 爪を切る画家の背中に鳥の声

0312・木・
 午後、着替えて外出。小田急線、地下鉄千代田線から銀座線へ乗り換えて、銀座リコー本社へ。
 午後4時、リコー本社、展示会場。プロジェクトの皆様が歓迎してくださる。新システム、オンデマンドプリンターで刷り上げた絵本はいい仕上がり。会場のエム ナマエのイラストレーションと言葉、藤井美奈さんの「書」のコラボ展示にコボちゃんが納得。これも江口さんのプロデュースのおかげ。ショウルームでは革命的印刷製本ユニット、オンディマンドプリンターを説明してもらう。機械の入り口からデータと紙さえ入れてやれば、世界でただ一冊だけの絵本だって出版できるのだ。このマシーンを使って、誰がどのような出版ビジネスを成功させるのか、楽しみでもある。
 アフターファイブ、執行役員の松田洋男さん、担当の鈴木晴喜氏、江本由枝さん、フォーラムコミュニケーションの江口克則さん、書家の藤井美奈さんと食事。築地千両の料理は新鮮でうまい。馬のタテガミというやつを初めて食べる。それに、海鮮ひつまぶしも初体験。さすが築地場外だ。リコーの皆様はステキな方々。いい仕事をしている人たちは、いつも気持ちがいい。
 満腹で経堂最古の酒場、オリアンへ。今週でママとお別れということで、満席。歌に自信のある面々が次々と歌っている。ボクも調子にのって歌っていたら、客に千円のチップをもらってしまった。これまた初体験で感激だが、店の女の子に手渡す。昔馴染みの飲み仲間からビールをおごられる。客や店の女の子と楽しく談笑。コボちゃんは酔っ払いの様子を面白おかしく実況中継してボクを笑わせてくれる。ボクはこのバーとママに35年間もお世話になったのだ。そして、このバーが世の中の景気に左右されず、ここまで客に愛されてきた理由のすべてはママの人柄によるもの。ボクが町田に引越し、そこでつらい入院生活を送っていたときも、ママたちは何度も見舞いにきてくれたものだった。ボクが失明し、経堂に戻ってからも、ずっとお世話になってきた。ママはオーストラリアへ引っ越していく。でも、ママは毎年帰国するし、オリアンは終わらないと聞いて安心。新しい経営者が、オリアンをそのまま引き継ぐというのだ。このまま、いつまでも変わらずにいて欲しい。
 店の女の子とデートの約束をして、外に出る。歩きながらコボちゃんとラジオブックスに耳を傾ける。『小鳥の恩返し』のストーリーはますます意外な展開をしていく。ドラマが終わると同時に我が家へ到着。イヌネコが歓迎してくれる。ひさびさ、心いくまで酔っ払った。
▲ 日が暮れて築地の春に舌鼓

0313・金・
 目覚めて、財布と薬入れを探す。いつもの場所になくてあせりまくる。コボちゃんに手伝ってもらったら、スケッチブックの上に大切そうにのせてあった。昨夜、酔っ払った無意識での行為だが、やはりボクの深層意識では、仕事机は聖域なのだ。
 午後2時、月刊『ラジオ深夜便』5月号締め切り。編集部の岩坂優子さんと談笑。刷り上ったばかりの絵本「いつもぶうたれネコ」と、リコーのプロモーション絵本「夢の力」をお見せする。
 ふたつの音声式腕時計が同時に不調。コボちゃんが電池交換に出かけてくれたが、時計屋に「壊れていますよ」、といわれてしょんぼりと帰ってきた。
 いつもの透析より帰宅してコボちゃんとワインを飲む。ラジオブックス、『小鳥の恩返し』は意外な結末で終わる。この作家、かなりうまい。
 暇を見つけてはケータイをいじる毎日となっている。ボクの印象では、懐中コンピュータ。使いこなしてみると、みんなが夢中になる理由が納得できる。
▲ 懐中の機械の中に春宿る
▲ 花開く螺子を巻いてる腕時計

0314・土・
 習うより慣れろ。ケータイをいじくり回しているうちに使い方が分かってくる。漢字変換の要領を理解。これでメールができるようになる。マッサージチェアでラジオを聴きながらケータイメール。コボちゃんも居眠り。仕事をする気になれない、ひたすらのんびりスペシャルサタデイ。
▲ 転寝は電気按摩の春の午後

0315・日・
 クオリスで外出。午後1時半、神楽坂スタジオクラスターで石原均追悼展報告会。絵本作家の黒井健氏、歌手の西島三重子さん、造詣大学の森まさあき教授、スタジオクラスターの青木岳志氏と弘子夫人、フリーエディターの小林潤子さん、とボクとコボちゃんが集う。石原均さんの作品を各地の絵本館や施設に預けることになる。各地で彼の作品が展示されることになって嬉しい。
 メンバーで外出。神楽坂のフレンチレストランでランチ。スタジオクラスターに戻って改めて石原均というアーティストの生涯を振り返る。それぞれが涙を流し、熱い思いをこめて、ひとりのアーティストの死について語った。石原均という愛すべき人物を透かして、いろいろなシーンが浮かんでくる。とりわけ、青木岳志氏のキンさんへの思いがボクの胸を打った。もしもボクが死んだなら、友人たちはなにを思ってくれるのだろうか。
 夕暮れになって解散。西島三重子さんはご亭主の竹之内信広氏が運転する真新しい真っ赤なホンダ・インサイトでさっそうと御殿場へ戻っていく。その新車のお尻いくっついて、コボちゃんがまだ新品といえる中古車のクオリスを運転している。
 帰宅して仕事机。ボクの手元にはキンさんの作品。形見としていただいたものである。そのすべすべとした立体表面は、確かな手ごたえでキンさんの魂を伝えていた。
夜食の刺身はまたまたネコのキロンと並んで。BGMはNHKラジオの日曜名作座だが、何度聴いてもがっかりする。やはり森繁加藤コンビが偉大過ぎて、誰が引き継いでも難しいのではあるが、現在のコンビには何かが欠けている気がしてならない。達者でない芸を押し付けられるから、よけい窮屈な気分になり、作品世界が見えてこない。以前は日曜最大の楽しみのひとつだった日曜名作座だったが、今は落胆の種になってしまった。ラジオ深夜便は宇田川アナウンサー。ラジオ歳時記が最終回なのが残念。この時間でずいぶん俳句について教えていただいた。
▲ 柔らかく作家の魂手に包む

0316・月・
 音声腕時計がないせいか、一日のリズムが悪い。目覚めたら、WBCのキューバ戦をラジオでやっていた。予想外なことに、日本が楽勝する。キューバは本当に強いのだろうか。
 いい天気。たまには一日、日向ぼっこしながら家にいたい。それでも、いかねばならない人工透析。
▲ 鈴なりに雀膨らみ桜の木

0317・火・
 ケータイから歩数のデータ送信。同時に富士通のサイトから東海道五十三次の日本橋スタートのメールが届く。これから53の宿場町を旅するのだ。まあ、1日千歩や2千歩では、いつまでたっても京都には到着しないだろうが。とほほ。
 昼、下村健一お宅で食事会。カコさんが準備してくださった豪華な韓国風ランチ。サムゲタンや牡蠣や蟹のキムチは絶品。それにカコさんの揚げてくれたネギ坊主の天麩羅はプロ級。家庭菜園からとってきたばかりのネギなのだ。また、このネギで作ったキムチが最高。下村和子さんは韓国料理のエキスパート。韓国風のオデンにも驚いた。まるでソウルにいるみたい。
 夜は執筆。終われば、ラジオをBGMに夜食。今週のラジオブックスはアナウンサーが活字になった落語を朗読しているが、聞くに耐えない。そもそも話芸を活字にすること自体がナンセンス。朗読と落語は別物。落語家の頭には世界そのものが出来上がっているのである。朗読も活字を拾うことから卒業した瞬間に、枠を飛び越すことができる。うまいへたではなく、登場人物の気持ちになれるかどうかが決め手。落語の場合のうまいへたは、またレベルの違う問題ではあるが。
 ラジオ深夜便は須磨佳津江アナウンサー。イタリア在住のコラムニストのレポートがいつも面白い。
 いよいよ春本番。桜の開花もすぐそこにきている。寿司をつまみ、ボルドーの白ワインで気持ちよくなって眠る。
▲ 気がつけば桜前線包囲網

0318・水・
 ひさびさ、二木てるみさんのケータイに電話。そしたら、明治座の楽屋だった。今月いっぱい、話題の舞台に出ているのだ。ケータイメールができるようになったと伝えて笑う。
 昼よりWBC韓国戦。惜敗。やはり野球は監督次第。するべきときにせず、しなくてよいときに、余計なことをするから勝てるチャンスも潰していく。サムライの名前が泣いている。予想が当たることは嫌だが、優勝は難しいのではないか。
 コボちゃんは日本点字図書館で新しい腕時計を買ってきてくれる。新デザインの腕時計をつけて病院へ。いつもの透析。採血データが悪い。やはり週末のフレンチは問題あり。
 耳からのニュースは日本人宇宙飛行士が始めての長期宇宙滞在。国際宇宙ステーションにシャトルがドッキングして、いよいよ宇宙生活が始まった。2001年宇宙の旅からはずいぶん遅れたが、それなりに宇宙開発が進んでいる。けれども、夢というよりは、アメリカの国益優先という匂いが宇宙空間からぷんぷんと流れてくる。
 帰宅して下村家からいただいた蟹とネギと切干大根のキムチで白ワインを飲む。コボちゃんがボクの横で蟹をばらしてくれている。蟹は生きたままキムチにされたものだと思う。酔っ払いの上海蟹に共通するものがある。とにかく、辛くてうまいのだ。まさに珍味の王様。けれども、明日は憧れの女優さんとのデートがあることを思い出し、あせる。ラジオブックスの落語朗読はひどい。頭脳明晰な小島慶子アナウンサーにも、不得意なものがあるのだ。本日の最大のニュースは、闇サイト強盗殺人事件に死刑の判決下る、だろう。感情に流されてはいけないが、この凶悪な犯罪については、全員死刑が妥当であると思わされてしまう。死刑が凶悪犯罪の抑止力になるか否か、自主した犯人だけが無期懲役になったことについては疑問が残るところだが。
▲ 真っ赤っか本場キムチは二度辛い
▲ クロラブがいびき高らか春うらら

0319・木・
 WBCはキューバ戦。日本、韓国以外だったら勝ててしまう。キューバのナショナルチームは若返りが必要なのかもしれない。日本のピッチャーをまるで打てないのだ。イチローが見事なヒットを飛ばしたらしく、猛烈な話題となっている。
 午後3時、「絵本の杜」の木村春子さんと打ち合わせ。おいしい桜餅をもらう。以前、春子さんが高田馬場の「いせや」で買い物をしていたことが判明。驚く。彼女はボクが生まれ育った場所に勤務していたことがあったのだ。
 童心社、絵本「いつもぶうたれネコ」配本予定日。
 夕方、女優の山下智子さんと食事。パスタレストラン、「麦畑」へ。途中、迷っていると、親切な人が場所を示してくれ、わざわざ開店を確認してくれた。着物姿の美人と歩くと、親切な人がやたらと現れる。「麦畑」を出るとき、ボクのニューヨーク個展にきてくれたという人物から声をかけられる。世界は狭い。
珈琲館まで迷いながら歩く。話に夢中になっているからだ。さ迷っていたら、彼女も昔の知り合いを目撃。それに、彼女は下村健一を知っていた。今日は世間は狭いことを証明するような一日。
コーヒーを味わいながら長話。山下智子と源氏物語との千年から次の千年への縁を聞く。京都府立大学名誉教授で「京ことば源氏物語」の著者、中井和子先生との師弟愛にも感動する。朗読やラジオドラマについての意見交換も愉快。オーダーストップで喫茶店を出る。コボちゃんとアルルが迎えにくる。アルル、着物姿の智子さんにきょとん。帰宅してワイン。魚はチーズと、着物姿の美人と歩くと、街がいきなり親切になるという話題。ラジオブックスでへたくそな落語の朗読を聴いたら、猛烈な睡魔。たちまち眠りに落ちる。
▲ 春風に着物の肩に手を置いて
▲ 春霞昔の縁《えにし》幻灯会

0320・金・春分の日・
 朝、親友から電話。お互い元気であることの確認。ワープロあれこれ。午前中のWBC韓国戦をBGMに。日本は韓国を破るが、韓国では、あれは負けていい試合だったと負け惜しみ。日韓の宿命対決は野球もフィギアスケートも、どれも熱い。
 1時半まで執筆。それから気分転換でシャワー。休日透析は3時に入室。またまた中途半端な休日となる。透析開始の2時間の差が、まとまったことの成否を分けてしまうのだ。
 本日は地下鉄サリンから14年。霞ヶ関の駅では献花が行われていた。記憶は遠くなるけれど、受けた傷がその人から遠くなることはあり得ない。
 帰宅して夕食。酒も飲まず、夜の10時に眠ってしまった。なんだかのんびりしていると思ったら、本日は三連休の初日。ボクにはまるで関係ないが。
▲ 春分の連休初日大欠伸

0321・土・桜開花予定日・
 ボクの仕事場のベランダに届きそうに伸びている桜の枝。その蕾がとうとう開いた。
 朝、足の爪を丁寧に切る。BGMは下村健一のサタデイズバット。ケンちゃんこと下村健一氏、みのもんたに日本一のレポーターと称せられる。同感。彼の視線は一方向に集中したがるマスコミや大衆の流れを常に修正する役目を果たしてきた。我々が陥り易い先入観や偏見。それらを持たない彼の取材姿勢は敗者も弱者も歓迎するところである。
 あんまり天気がいいので、コボちゃんとアルルの散歩についていく。豪徳寺までの散歩道、途中ひさびさにアルルと盲導犬ごっこをした。知らない人が見たら、だまされてしまうかもしれない盲導犬ぶり。世田谷線、山下駅前の花壇に腰掛け、テイクアウトのコーヒーを楽しむ。風は冷たいが、日差しが初夏のよう。そこへ上品なご婦人が老犬を伴って現れた。するとコボちゃんが「まあ、コロちゃん!」と呼びかける。コロちゃんは、まだ子犬だった頃、門の隙間から飛び出してきて、盲導犬アリーナにじゃれついて以来の知り合い。いつもは門の外から声をかけるだけの付き合いなのだ。コロちゃんはアルルが気にいったらしく、しきりに匂いをかいでいる。アルルは落ち着いて座り、それを許していた。ボクは初めてコロちゃんに直接触れることができた。飼い主のご婦人と会話するが、どこかおぼつかない。少し遠出をし過ぎてしまったらしい。ご近所なので、途中までご一緒する。コロちゃんはアルルのあとからついてくる。道に迷いそうなご婦人を、コロちゃんが上手に導いている。ご主人をなくされてから、ご婦人にとって、老犬のコロちゃんは掛け替えのない家族なのだ。住宅街を歩いていたら、ネコ型ベンチを作っている中年男性がいる。邸宅のオーナーの日曜大工なのか、それとも本物の大工さんなのか、コボちゃんは見分けがつかないらしく、おかしな声のかけ方をしていて、答える方も曖昧な返事をしているが、ネコ型ベンチを褒められて悪い気持ちはしていなかったらしい。座っていくか、と親切にいってもくれた。それを断って、コロちゃんとご婦人がお宅に入るのを見届けた。
 帰宅してマッサージチェア。目の前で桜が咲いている。春の選抜高校野球大会をBGMにケータイをいじる。先日のお礼メールに、下村和子さんから返信があり、日本一のレポーターの別の側面を教えてくれる。しばらくはカコさんとのメールのやりとりで笑ったり楽しんだり。やがてケンちゃん家族は成田で合流し、アラスカの山小屋で休暇を過ごすのだ。
 コボちゃんは佐原の実家へアルルを連れて。午後5時半、青木岳志ご夫妻が迎えにきてくれる。クルマを待つ間、建物の入り口でケータイメールを打つ。これは時間潰しになっていい。ボクは退屈が嫌いなのだ。
 高円寺で新城聡さんの芝居、『オイディプスの娘』。新城さんは青木岳志さんや石原均さんの古い友人。新城さんは丸瀬太郎さんの形見であるスタンドカラーのジャケットに身を包み、芝居にとってのもう一人の主人公を演じている。有名なギリシャ悲劇ではあるが、古さを感じさせない新城さんの演出だった。目が見えていた頃から、ずいぶん芝居を見てきたが、その映像的記憶があまりない。芝居については、むしろ失明してからのものをよく覚えている。やはり、視覚に訴えるより、想像力に働きかけることの方が有効のような気がしてならない。
 青木岳志ご夫妻と食事。昨日、石原均氏のお墓参りに名古屋を往復したばかりでお疲れのご夫妻なのに、ボクがデニーズにいきたいといったので、親切に連れていってくれたのだ。夢中でおしゃべりしていたら、午前様になってしまった。ご夫妻、短期独身のエム ナマエを家まで送ってくださり、名古屋からのお土産を沢山手渡してくださった。
 短期独身のエム ナマエ、いろいろな人と出会った平和な土曜日となった。
▲ 枝広げ光の踊り舞う桜
▲ 遠い春犬を伴侶に老婦人


0322・日・放送記念日・東京マラソン・
 朝から激しい南風。パソコンを開くと、こんなメールが届いていた。
[東海道コース] 品川到着!
おめでとうございます。品川を通過しました。
次は川崎。
 昼前、別府さんが弁当を買ってきてくれた。親切にカップ味噌汁をセットしていってくれる。セブンイレブン式ランチのBGMは、NHKラジオの素人喉自慢。
 満腹でマッサージチェア。猛烈な眠気で熟睡。この頃の疲れが一気に出た感じ。夜になり、オロナミンCを飲んでパソコンに向かうが、どうにも集中できない。また眠る。いくらでも眠れる。そういえば、最近は昼寝ひとつしていなかった。目覚めてからやっとパソコンに集中できた。
 夜になって、コボちゃんが実家から帰ってくる。連休の高速道路を運転したので、よほど疲れたのだろう。赤ワインを飲んで、お互いの週末を報告しているうちに、いつの間にか眠っていた。そういうボクも、ほとんどネコと寝ていた日曜日となった。
 深夜、NHKのラジオドラマアーカイブスは『おはようインディア』。寺山修二の構成。芸術祭参加作品だったとか。1966年放送。寺山修二の世界と人間を見つめる心がやさしい。また、主人公のインド留学生のいら・メータという若い女性とケンちゃんという少年の心の交流がいい。自分にとっての1966年を思い出しながら、その世界に迷い込んだ。素敵な時間だった。寺山修二、改めていいと思う。
▲ 花散らし窓叩く風子守唄

 

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