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★ エム ナマエの公開日誌 − あれこれ出来事 思いはいろいろ −

■ 2009年4月13日〜19日
 いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。
 音声パソコンを入手した当時、ただのスケジュール表だったものが、いつか毎日の記録となっていました。筋力運動、万歩計、透析データに食事の記録。健康維持のためにも大切なこの習慣も始めてからもう20年。
 けれども、世間の皆様がされているようなブログとは違い、わざわざ読んでいただけるものではありません。ただ、2007年の8月12日から遊びで始めた十七文字が、季節や出来事のヘッドラインになるので、ここに紹介させていただいてきました。
 毎日の出来事。去来する思い。本当はひとつひとつ、丁寧な記事に仕上げたいのですが、イカサマ俳句にマヤカシ川柳。これら十七文字や日記の切れ端で、現在を生きるボクたちの暮らしを浮かび上がらせてみたいと思います。
 夏目漱石や永井荷風ならいざ知らず、ボクの日記なんぞ死んでみたって永久に披露されるチャンスなんて訪れるわけもなく、こうして自分に命のある間だけ、毎日の出来事や思いを粉砕して、かけらを集め編集して、ホームページに掲載し続けることにしたのです。
 さて、近頃ここいら最近の1週間。出来事あれこれ、思いはいろいろ。どうか、よろしくお付き合いください。
エム ナマエ


0413・月・
 二度寝をして朝寝坊。神田豊茂訓練士からの電話で目覚める。アルル、アリーナドッグスクールのワンちゃん合宿から元気で帰ってくる。アリーナ2世も一緒。二匹、テーブルの周囲をぐるぐる回って遊んでいる。カンちゃんこと神田訓練士とコーヒータイム。ワンちゃん合宿でのアルルの様子を聞く。今年の秋のワンちゃん合宿にはボクらもぜひ参加したい。
 たまっているメールを開くと、志木高校以来の慶應義塾同期の野津公が4月11日の土曜日に亡くなっていたことがわかる。合掌、落涙。最後に会ったのは渡辺茂男先生とのお別れ会だった。そのとき、カバのイラストレーションを依頼され、描いたのが彼との最後の仕事にもなった。彼はカバヤ食品の御曹司なのである。美しい高校時代、作家になってからの仕事の記憶。数々の記憶はボクの中で永遠に残っていく。けれども、友を見送ることの悲しさよ。病気のボクよりも先にいってしまう友を思うと、人の運命の不思議さと儚さが胸にしみる。野津への思いをこめて弔電を打つ。
 某商事CSRの鈴木さんとの打ち合わせ。今週中にキャラクターのアウトラインを仕上げる。
 透析へいく前、志木高校の同輩、関の家に寄る。須永の香典返しを受け取り、熊本の土産を渡す。こういう細かい気遣いはコボちゃんが大切にしているところ。
 いつもの透析。今年からゴールデンウィークとシルバーウィークの採血検査をなくすとのこと。あれこれと理由をつけては、検査が減らされていく。国家でも、病院でも、主人公が国民や患者でないことだけは確か。そして、結果は当事者だけが背負わされる。
 ラジオを聴いていたら、どこかの刑務所で、受刑者たちが盲導犬のパピーウォーカーをしているとのこと。イヌと人間のいい関係が生まれることを祈る。
 迎えのクルマにアルルが乗っているが、元気がない。ワンちゃんたちとの楽しかった合宿が懐かしくて仕方ないのだろう。帰宅すると、アルルとネコドモが鼻先でキスをしている。全員集合が嬉しいのだ。
 熊本の芥子蓮根と馬刺を食べる。コボちゃんが
「辛い、辛い。どうしてこんなに辛いのかしら」
と泣きながら食べているので、
「ねえ、どんな食べ方をしているの。これは煎餅みたいにバリバリ食べるもんじゃなくって、チビリチビリと食べるもんだよ」
というと、「あ、本当だ。ちびちび食べると辛くない」という。団栗の実を欲張ってほおばっているリスみたいに、芥子蓮根を食べれば、そりゃあ辛いに決まっているのだ。芥子蓮根も馬刺もうまかった。また熊本にいってみたい。
 田中康夫のアクセスが終われば、ブルーチーズと赤ワインでラジオ朗読を聴く。NHKラジオ深夜便で藤沢周平作品朗読。25時、落語をBGMに眠る。金馬の「居酒屋」を最後まで聴かないうちに眠りに落ちていた。
▲ 葉桜に散りいく友の顔浮かぶ

0414・火・
 千代田区麹町でクレーンが倒れる。新宿通りが通行禁止になっているとかで、クルマでいくのをあきらめる。下高井戸から京王線で新宿へ。涼しいのに電車には冷房。あきれる。
 午後2時、東京女子医大、新城先生フットケア受診。珍しく患者さんが少なくて、ほとんど待たされずに診察してもらえた。経過は良好で血行は完璧とか。禁煙と筋力運動の結果でもあるらしく、これは新城先生のご指導のおかげ。心よりお礼を伝える。新城先生もまた、日本一の名医のおひとりである。
 女子医大の中庭でコーヒーを飲んでから、懐かしい市谷河田町を通過し、これまた懐かしいバスで新宿へ。ただし、バスはすっかりバリアフリータイプになっていた。ボクは中学時代、ほんの数ヶ月ではあったが、この河田町に暮らしていたことがあったのだ。次々に聞こえてくるバス停の名前に、麹町中学時代の思い出が浮かび上がってくる。
 新宿駅西口のバスセンターで降りると、横断歩道の信号待ちの女性が立ったままでファウンデーションを塗って、化粧をしている、とコボちゃんが実況中継。電車の中や街の中、衆目の前で、どうして化粧ができるのだろう。ボクは考えた。そうだ。スッピンの彼女の顔は当人以外は誰も知らない。つまり、化粧の途中では、その誰も知らない顔を誰に見られても困ることはないのだ。いいなあ。ふたつも顔があって。
 京王デパートのデパチカをコボちゃんとうろつく。コボちゃんはお菓子に目移りしきり。
 帰宅して、さとうまきこさんからの留守電に笑う。パソコンに向かってメールあれこれ。青木裕子アナウンサーによる『銀河鉄道の夜』の朗読ショートバージョンを読む。このショートバージョン、ボクの好みと完璧に合致する。これに小澤章代さんのスピネット演奏が重なれば、美しい銀河の世界が展開されること間違いなし。
▲ 葉桜が雨に濡れてるお堀端

0415・水・
 目覚めてすぐに散歩に出る。歩くと汗が出てくる。もうトレーナーではなく、Tシャツにジージャンで外出はOK。アルルはワンちゃん合宿効果だろうか、脇見をせずに盲導犬ごっこをして歩く。これで世田谷線の踏み切りを渡れるようになると、もっといい。豪徳寺でUターンして帰宅する。最後の桜が散っていた。
 午後、某商事CSRより依頼の画像データをサンワプリンティングより送信してもらう。
 午後6時よりいつもの透析。プロ野球は金持ち球団が強くて面白くないので、ずっとFM-J-WAVEを聴く。ジャムザワールドのシャッフルクイズの答えは森田健作新知事。今まさに問題の渦中にある人物。欺いて当選したことで市民から訴えられているのだ。この人、昔は爽やかに役柄をこなしていたが、知事という役柄を、昔のように爽やかに演技し続けることができるだろうか。
 三階の我が家への階段をあがっていくと、二階の溝口さんから竹の子御飯をいただいた。帰宅して食べたが、これが実においしくて、満腹になって眠る。おかげで目覚ましが鳴るまでしっかりと眠った。
▲ 踏み出せば緑の香る朝の道

◇[東海道コース] 藤沢到着!
おめでとうございます。
藤沢を通過しました。
次は平塚。
あと23,125歩です。

0416・木・

 目覚めてすぐに散歩に出る。今朝はTシャツにジージャン。少し涼しいが、歩けばたちまち暑くなる。世田谷線近くまでアルルとふたりで歩く。コボちゃんは覚えたばかりのケータイのカメラでボクらを撮影。世田谷線山下駅前でブルテリアのチャップリンと出会い、アルルは遊ぶ。チャップリンのご主人はアルルを盲導犬と思ってくれているらしい。ボクは壁によりかかり、犬たちの遊ぶ気配を聞いている。その様子を見ていたご婦人がボクに声をかけてくださる。義母にあたる方がボクのファンであるらしいのだ。ボクのような無名の画家でも、仕事をご覧になり、顔まで覚えていてくださる方々がいらっしゃるのはありがたい。
 今朝のアルル、踏切を渡ることができた。花壇に座り、コーヒー。それを見ていた小さな女の子がアルルに声をかけてくる。パン屋の女の子とか。コボちゃんはそのパン屋さんのネコ焼きを買ってくる。マネキネコの形をしている人形焼きだが、ここは豪徳寺。さすがはマネキネコの発祥地である。小さな女の子はボクにスミレの花をくれ、それからパン屋のご主人と幼稚園に出かけていった。帰り道、ネコ型ベンチで撮影をしていたら、お向かいの奥さんに声をかけられる。いつもこのベンチに座っているのを見ておられたのだ。きっとヒマな人間たちと思われていることだろう。まあ、そうには違いないけれど。
 帰宅してコーヒータイム。ワルツの村山さんにいただいた蜜蜂の巣を食べる。甘くておいしいが、世界各地では蜜蜂の集団が崩壊しているとの噂。これを蜂群崩壊症候群という。蜜蜂たちが女王蜂をほったらかして、巣箱から家出しているのだ。蜂蜜が貴重品となりつつあるが、早く原因を究明して欲しい。蜂蜜は我が家の朝のテーブルには欠かせない食品なのである。それだけではない。蜜蜂たちは果実の受粉にも多大なる貢献をしているのだ。彼等の存在がなければ、おいしい果物にもありつけなくなってしまう。
 ワープロと電話とメールあれこれ。アリーナドッグスクールの秋のワンちゃん合宿のホテルの件で神田訓練士と連絡を取り合う。イヌといえば、マッサージチェアでコボちゃんに『犬身』を読んでもらう。毎日用事があって、なかなか読書が進まない。
 午後はずっとオランウータンの絵をかく。どうも猿のキャラクターは難しい。ラジオをBGMに何枚も描く。仕事が終われば、遅い時間にしっかりとした夕食。ボクにとって豚肉と春菊の煮物は懐かしい味。
▲ ネコ焼きにネコ型ベンチ豪徳寺
▲ 蜜蜂が女王にそむき家出する

 

0417・金・
 朝からいろいろなポーズのオランウータンを描く。そのうちの何枚かを彩色。スキャンして鈴木さんに送信。オランウータンは森の人ともいう。そんな彼等の家を再び復活させるプロジェクト。このキャラクターはそのシンボルになるはず。役立ててもらえればありがたい。
 いつもの透析。野球がつまらないので、FM-J-WAVEがBGM。シャッフルクイズを楽しむつもりが、瞬間で分かってしまって、つまらない。NHKラジオに回すと、スポーツジョッキーに出演しているスポーツ音痴の青木裕子アナウンサーがおかしい。
 帰宅して、ネコのキロンはマグロの刺身。ボクはカツオの刺身。ブルーチーズが成熟してきて、たまらなく美味。赤ワインを楽しんでいたら、絵本作家の木村裕一氏から電話。絵本の打ち合わせなど、1時間のおしゃべりとなる。
 ラジオ深夜便で19世紀のオーストラリアからやってきたイギリス人の落語家の物語を聴く。快楽亭ブラックがその人。本名をヘンリー・ジェームス・ブラックといい、明治大正を通じて活躍した多才な芸人だったとか。談志家元の弟子だったブラックとはどんな関係があるのだろうか。調べた結果、当代は二代目らしいが、初代との直接の関係はないらしい。当代ブラックは米国人とのハーフで、国籍は日本。現在も活躍中で、国際ジャーナリストの及川健二氏が渋谷区長選挙に推薦したこともあり、ボクも協力依頼を受けたが、結局ブラック師匠は選挙には出馬しなかった。
▲ 何思う家をなくした森の人

0418・土・
 起きてTBSのサタデイズバットの下村健一を聴く。あいかわらず目の付け所がいいが、ナレーションも下村健一だったら、もっといい。
 豪徳寺まで散歩。途中の盲導犬ごっこをアルルはとてもうまくやる。豪徳寺のパンジーの花壇でひとり、コーヒーを飲んでいたら、アルルはボクに内緒でトイプードルと挨拶している。コボちゃんがくると、たちまちはしゃぎ、トイプードルと友達になる。帰り道、クロシバが吠えて、女主人が
「すいませんね」
と声をかける。江戸犬のエディーは今朝はいなかったが、ワンちゃんのおもちゃらしいものが散乱していて、おそらく散歩にでもいっているのだろう。ネコ型ベンチで弁当屋さんに遭遇。電話番号を教えてもらう。ネコ型ベンチの邸宅のご主人と挨拶。歩いていると、またまたさっきのトイプードルに出会う。帰宅してモスのライスバーガーで朝食。
 午後のラジオはパカパカ行進曲。これにデイキャッチのアラカワKKというパーソナリティーが出演。落とされたので大笑いする。このKKという人、非番なのにすごく緊張している。鼻息が荒くなっていて、真面目で気の小さい人であることがよく分かる。つまり、前任なのだ。ラジオをBGMにして絵の仕事に向かうが、精神集中がうまくできない。ラジオはあまり面白くてもいけない。
 ベネッセから再使用の契約書が届く。リコーからは絵本の増刷とイベント再使用の依頼あり。ありがたい。コボちゃんは自転車を買いにいく。
 「ラジオ文芸館」は小野卓司アナウンサー。江戸川乱歩作品で名探偵明智小五郎が活躍する。とはいえ、殺人犯の心理を描いた地味な作品で、あまり記憶にとどまらないもの。小野アナウンサーと富本修二アナウンサーの語りに共通性があるのは気のせいだろうか。もしかしたら、朗読にプライドをかけるアナウンサー同士が意識し合っているのかもしれない。いや、そう考えるのは、朗読の好きなボクの勝手な妄想に過ぎない
 ニュースでは麻生太郎が自分の経済対策を三段式ロケットにたとえていた。北朝鮮の三段式は失敗したはずだが。もう少しましな例えはないのだろうか。太郎さん、あまりセンスがいいとは思えない。
 夕食はコボちゃんのおいしい竹の子御飯。おかわりをしてしまった。毎年いただく大峽先生からの竹の子は、柔らかくて歯応えがある。赤ワインで気持ちよくなって、ラジオ深夜便のドラマアーカイブを聴く。徳川夢生の語りで宮本武蔵の巌流島の決闘が劇的。江戸川乱歩の地味な推理小説が記憶から消し飛んでしまうのむ無理はない。いや、江戸川乱歩のような大作家にも、いろいろな作品があるということだ。
 ラジオの朗読やドラマの合間に、青木裕子アナウンサーの宮沢賢治作品の朗読も聴く。ますます語りの世界に耽溺していく。ドラマに朗読、アナウンサーに落語家、弁士に政治家、語りにもいろいろとあるのだ。
▲ コーヒーに花の香りをブレンドし
▲ 我が国の三段式も不安です

0419・日・
 朝寝坊。コボちゃんはアルルと散歩。ボクはワープロあれこれ。BGMはNHKラジオのクラシックでドビッシーのバレー組曲。
 コーヒータイムで蜜蜂の巣を食べる。依頼のファックスや手紙あれこれをコボちゃんに読んでもらう。
 東京FMのユーミンや達郎をBGMに某商事CSRのためのイラストレーション制作。まずは遊びバージョンから。オランウータンを樹木の枝にのせるのが難しく、F10のスケッチブックの残りの紙がなくなってしまい、あせる。あまり下絵制作に夢中になり過ぎて、右手の指が痛くなり、洗面台の熱いお湯で暖めてやる。夜になってからは志ん朝の落語をBGMに下絵制作に集中。できたのは深夜。
 夜食は山盛りのキャベツの千切りに黒豚の生姜焼きで赤ワインを飲む。ボクの大好物をコボちゃんが作ってくれたので、疲れがとれた。志ん朝の落語もいいのだが、途中から宇田川アナウンサーのラジオ深夜便に回す。
▲ 仕事馬鹿春の陽気も知らないで
▲ 湯の中で指のこわばり溶けていく

 

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