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★ エム ナマエの公開日誌 − あれこれ出来事 思いはいろいろ −
■ 2009年4月20日〜26日
 いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。
 音声パソコンを入手した当時、ただのスケジュール表だったものが、いつか毎日の記録となっていました。筋力運動、万歩計、透析データに食事の記録。健康維持のためにも大切なこの習慣も始めてからもう20年。
 けれども、世間の皆様がされているようなブログとは違い、わざわざ読んでいただけるものではありません。ただ、2007年の8月12日から遊びで始めた十七文字が、季節や出来事のヘッドラインになるので、ここに紹介させていただいてきました。
 毎日の出来事。去来する思い。本当はひとつひとつ、丁寧な記事に仕上げたいのですが、イカサマ俳句にマヤカシ川柳。これら十七文字や日記の切れ端で、現在を生きるボクたちの暮らしを浮かび上がらせてみたいと思います。
 夏目漱石や永井荷風ならいざ知らず、ボクの日記なんぞ死んでみたって永久に披露されるチャンスなんて訪れるわけもなく、こうして自分に命のある間だけ、毎日の出来事や思いを粉砕して、かけらを集め編集して、ホームページに掲載し続けることにしたのです。
 さて、近頃ここいら最近の1週間。出来事あれこれ、思いはいろいろ。どうか、よろしくお付き合いください。
エム ナマエ


0420・月・
 昨夜の緊張と興奮がおさまらず、すぐに目覚めてしまう。早起きになってしまい、たまっていたメールに返信をする。朝のニュースで、GSのジャガーズのリードボーカルだった岡本信さんの訃報が告げられる。59歳。還暦の祝いのパーティーが予定されていたとか。ボクは彼のファンだったのだ。一度、木村裕一氏の実姉、木村明子さんの紹介でお会いしたことがあって、そのときは音楽の話題で盛り上がった。やさしい人で、盲導犬アリーナが彼の手をしつこくなめていたのを嫌がらず、ずっとされるままになっていたことをよく覚えている。心からご冥福を祈る。
 コーヒータイム。女優の矢野陽子さんから芝居のチラシがくる。丸瀬太郎さんの原作で矢野陽子主演。ますます厳しくなる老人問題に焦点を当てた芝居『しぶとさは三文の徳・笑う角には鶴亀荘』。早速チケットを予約。
 午前中、樹木で遊ぶオランウータンの絵を仕上げる。午後、鈴木さん、受け取りにくる。彼女、画学生だったことがあったとかで、カルトンを持参してきてくれた。
 透析中、NHKラジオの真打競演を聴く。バラクーダは相変わらず中途半端。中堅漫才師の「美人税」という切り口がよかった。落語は若円歌。ネタの途中で記憶力自慢をしていたが、記憶力がなければ落語家はやってられない。それにしても、ここのところ寄せにいけてないのが口惜しい。
 帰宅してから、コボちゃんがキロンに買ってきた初鰹を味見させてもらう。カマンベールと赤ワインのアンサンブルがたまらない。24時半になったら、ラジオ深夜便で藤沢周平作品朗読。松平アナウンサーの語りは、うまいのかそうでないのかよく分からない。けれども、毎週楽しみにしているのは、やはり味のある朗読であることの証拠である。
▲ とられても腹の立たない美人税
▲ 晩酌はネコと並んで初鰹

0421・火・
 コボちゃんの初出勤。張り切って出かけていった。ボクにいつ何が起きても慌てないように、今から看護士としての職歴を重ねていくのだ。ボクは部屋を開放して、リビングにビートルズをかける。メールあれこれ。孫の手弁当がきてくれて、昼の弁当を手渡していく。それをアルルが出迎える。
 執筆あれこれ。ラジオがBGMだが、頭の中を素通りしていく。唯一聞こえてきたのは、毒物カレー事件で最高裁の判決は死刑だったということ。本当にそれでいいのだろうか。状況証拠を重ねたからとはいえ、疑わしきは罰せずの原則に抵触はしないのだろうか。もしも冤罪であったら、これは国家的犯罪でもある。折りしも『足利事件』の再審が認められようとしている時期でもあるし、最高裁での痴漢冤罪判決の直後でもあったし、来月から裁判員制度が始まるタイミングでもあるから、毒物カレー事件容疑者への死刑判決が気になる。
 果たして、裁判員制度の下で個人は死刑判決が下せるだろうか。裁判所というステージで一般人に判断が委ねられる。これをチャンスと受け取るか、それともお荷物と受け取るか、それは個人の受け取り方次第だろう。けれども、司法が門戸を広げたとはいえる。もしもボクが裁判員に選ばれたら、さあ、どうするか。
 コボちゃんが帰宅。アルルもネコドモも、「お前、一日どこへいってたんだよお」という目でコボちゃんを凝視したとか。
 就職祝いということで、激しい雨の中を出かける。大きな傘に当たる雨粒の音が楽しい。レストランで食事。ボクはサーロインステーキ。隣のテーブルが年配者たちの酔っ払いで、せっかくのコボちゃんとの会話が途切れがち。ひとり、猛烈に騒々しい老婦人がいた。外は激しく雨が続く。そのままスーパーに立ち寄り、キロンに刺身を買ってくる。けれども、コボちゃんは疲れてしまったらしく、居眠り。ボクはワープロに向かい、残っていた仕事を仕上げる。
▲ ひとりきり部屋に流れるビートルズ
▲ 傘を打つ雨のリズムは春の歌

0422・水・
 コボちゃんが起きてきて、アルルを連れて一緒に散歩に出る。夏のようないい天気。Tシャツに羽織った革ジャンの背中が日光で熱くなってきて、背中がかゆくなってくる。アルル、ますます盲導犬ごっこがうまくなる。車道のところで、コボちゃんにアルルを預けると、それを見ていたご婦人から声をかけられた。アルルを盲導犬訓練中のワンちゃんと思っているらしい。しきりに
「お利口さんね」
といってくれる。お宅の前なのだが、中には体重45キログラムのラブラドールがいるらしい。けれども、決して吠えたりはしない。やっぱり、ラブラドールがお好きという。そのうち、話題が噂の犬軍団のこととなる。地域のみんなが迷惑と考えているのだ。それを知らないのは軍団のメンバーだけ。困ったことである。豪徳寺へ。世田谷線の踏み切りでアルルは躊躇したが、励ますと勇気をふるって踏み切りを渡る。踏み切りにトラウマがあるのだ。花壇に座り、褒めてあげる。別府さんに電話して、コーヒーに誘う。ネコ型ベンチで休憩してから帰宅。すぐに10時。別府さんとコーヒータイム。失明以来、彼女にはいつも助けられている。
 透析前、デイキャッチをBGMにシャワーと着替え。中学生のグループがモンスター狩と称してホームレスを襲撃するというニュース。こいつらを育てた親こそ、モンスターではないのか。指導すべき者たちは、子どもが残酷な存在であることを認識していなくてはならない。
▲ 踏み切りの花壇はスミレ鐘の音
▲ モンスターいるよお前の家の中

◇[東海道コース] 平塚到着!
おめでとうございます。平塚を通過しました。次は大磯。

0423・木・
 朝からスマップの草薙君が逮捕されたというニュースで騒然としている。酔っ払って裸になっただけで逮捕されたとは気の毒。おまけに家宅捜索とはちと大袈裟。記憶喪失になるほどの酩酊状態にあったのならば、それは保護の対象であって、逮捕されるべき立場ではないような気がする。それに鳩山総務大臣には最低の人間とまでいわれ、さんざんな目に合って、泣きっ面に蜂。成功と転落はコインの裏表の関係にあるが、スーパースターは夜明けの虎への変身遊びで、高いツケを払わされる結果となってしまった。
 コーヒータイムの後、コボちゃんは出勤。ボクはビートルズをBGMにいつもの朝の運動と日記。執筆あれこれ。ドアチャイムが鳴ると、孫の手弁当の配達員をアルルが歓迎。昼になったら、ラジオをつけてランチタイム。弁当はちょうどいいボリューム。
 しばらくぶりに、とある画学生からメールをもらう。彼女は視覚に障害があるとのことだが、美術にトライしている、ボクが期待する若者のひとりである。けれども、今度で初めて打ち解けてメール交換できたような気がしている。ケータイのメールというものは、壁を取り払ってくれる効果があるらしい。
 勤務から帰ってきたコボちゃんは草薙君逮捕のニュースを知らないでいた。仕事に集中していたのだろう。夕食はドミノピザ。年に一度の贅沢とばかり、豪華版を注文する。ビールと赤ワインでもりもり食べた。ミルフィーユのダブルチーズはジューシーでうまいが、胃袋は少し可愛そう。
▲ あら大変風呂と公園間違えた
▲ お巡りさん裸の付き合いしましょうよ
▲ 夜明け前孤独な虎は檻の中

0424・金・
 髭剃りをしてから朝の散歩に出る。いつ誰に出会うか分からないからだ。途中、ウグイスの鳴き声に足を止める。口笛で真似をすると、近くにやってきて、また鳴く。空想よりもずっと地味なその姿を見せて鳴いているそうで、愉快。それにしても、ずいぶん歌のうまいウグイスで、ボクの口笛に対して、
「こういう風に鳴くんだよ」
といいたげに鳴いているのだ。ウグイスの歌声指南には授業料を支払わなければならないかもしれない。ところで、世間ではウグイス嬢という言葉があるが、鳴いているウグイスはすべて男で、最近のお嬢さんは泣いたりしない。
 帰り道、ネコ型ベンチを通ると、白いペンキでお化粧をされていた。どんなネコになっていくのだろう。あんまりお化粧をして欲しくないとも思うが、ボクのネコではないから、仕方がない。
 午後2時、リコーPIC関連の打ち合わせ。絵本や展示など、計画がいろいろとあるらしい。
 TBSラジオ、デイキャッチで宮台先生が刺激的な提案。自衛隊は反撃可能な武装をせよ。専守防衛ではなく、敵本拠地に対する攻撃能力こそが抑止力になるという論理。ただし、その反撃力を誇示しなければ、抑止力にはつながらない。軍事力を背景にした外交こそが有効とは悲しい現実であるとも思う。
 気になるニュースは9歳の少女が虐待によって死亡、その遺体を遺棄していた、という事件。たとえ相手が動物であっても、小さな存在への虐待や暴力は絶対に許してはならない。子どもの頃に受けた暴力は、その人の心に消えない傷を残していく。これはボクの体験談でもある。亡くなった父親に対して、今もボクは許せない気持ちを残しているのだ。それにしても、少女が命を落とすまで、学校や地域は何をしていたのだろう。どうして、その命を救うことができなかったのだろう。気になることがあったら、気楽に声を掛け合う世の中であってもらいたい。
 翌日になってから、鳩山総務大臣は草薙君を最低の人間といったことを撤回。今度は人は人を裁けないと謝罪した。けれども、この人、法務大臣のとき、何人かの死刑囚を絞首台に送ったのではなかっただろうか。死神とか、死刑執行人とか呼ばれて。きっと、本人はそのことを覚えてもいないのだろう。また、こういうタイミングで、鳩山の兄貴は警察はやり過ぎだといっている。それぞれに立場があるのだ。
 さて、話題の警察だが、またまた取調べ中の容疑者に逃げられた。お巡りさん、草薙君逮捕もいいけれど、もっとしっかり願います。
▲ ウグイスが歌声指南朝の道
▲ 死神が草薙裁き謝った

◇[東海道コース] 大磯到着!
東海道五十三次、大磯を通過しました。
次は小田原。あと27,833歩です。

0425・土・
 朝、下村健一のサタデイズバットを聴く。4年前の今日に起きたJR西日本の朝の通勤電車事故についてのケンちゃんの追跡レポート。4年前の今日、エム ナマエの個展『ありがとうアリーナ』が開かれたのだ。その朝から電車事故のニュースばかり。けれど、この夕方、下村健一一家も、宮台真司ご夫婦も、絵門ゆう子さんもオープニングパーティーにきてくださった。みんなアリーナをよく知っている人たちだった。
 いつもの朝の運動と日記。新しいバックアップFDの整理。こういう作業に時間がかかる。永六舗の土曜ワイドに漫才のサンドウィッチマンが出演。売れない芸人が売り物だったのに、ずいぶん出世して、ご本人たちも晴れがましい出演だろう。ボクも嬉しい。でも、相棒が交通渋滞で遅刻。さすが25日の連休前である。
 夕方、外は激しく雨。寒いので暖かい支度をして外出。Aさんがタクシーで迎えにきてくださる。経堂駅前、アルルカンでM製菓のFさん、Iさん、Aさんとキャラクターのことで打ち合わせ。ヌイグルミを抱きながら話をする。このキャラクター、街角のキグルミキャンペーンでは、女性が立ち止まってハグされたいとかで、人気があるらしい。なんとなく納得。激しい雨の中、寿矢へ移動。満員だった。カウンターに並んで談笑。満腹でオリアンに移動。新しいママに挨拶をする。11時まで、みんなで歌う。
▲ 連休の雨の土曜日ざかざんざん

0426・日・
 朝から不調。声がうまく出ないので風邪かと思ったら、ゆうべのカラオケのせいだった。とはいえ、寒気がするし、仕事に集中できない。やっぱり風邪気味だと横になっていたら、急にブタインフルエンザのことが気になり出した。メキシコでブタインフルエンザの流行の兆し。世界的パンデミックの不安が広がる。WHOの反応が遅いのが気になる。このウィルスがどこからきたのか。トリインフルエンザの変異でないことを祈る。
 夜、コボちゃんが帰宅してから、アルルを連れて散歩に出る。暗い中、ドーベルマンのペールがこちらを見て遊びたい雰囲気を伝えてきた。
 帰宅して原稿執筆。ラジオをつけると、友人で詩人の矢崎節夫さんが自ら発掘した天才詩人、金子みすずについて語っている。海辺の小石から宇宙へ広がっていく、スケールの大きな感動的な講演だった。また、ボクにとっては、講演とはこうでなければならない、というお手本でもあった。失明当時のボクに、まだあまり知られていなかった金子みすずという詩人の存在を教えてくれた矢崎さんには今も感謝をしている。
 ラジオ深夜便をBGMに夜食。みなみらんぼうさんが長野の上田について語っていた。そこには戦没画学生の遺作を集めた美術館、無言館があるのだ。
 24時に眠るが、早起きをしてしまい、書きかけの原稿執筆を続ける。
▲ 目に見えぬことを教えてくれた人

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