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原稿用紙プライベート盲導犬アリーナ日記
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■誰か教えて 謎の虫

◆ 毎朝の散歩
 最近毎朝散歩をしている。それは暖かくなったから。風邪は冷たくても、太陽さえあれば日差しは強いし、ちょっと歩けば汗も出る。雨でさえなければ、ボクも朝の散歩に出られる季節となったのだ。
 とにかくありがたい。昨年の今頃は足の痛みで苦しんでいた。いや、苦しんでいるどころではなく、もう少しで足を切断するところだったのだ。コボちゃんに車椅子を押してもらい、やっと移動していたのだ。それがどうだ。朝の散歩を楽しむなんて、すげえ贅沢をやっている。これも名医に出会えたおかげである。いくら感謝しても、し過ぎるということはない。
 散歩は三人でいく。三人だから三歩の散歩。うわあ、くーだらない。三歩しか歩かないのは散歩じゃない。こーれもくーだらない。

◆ 二人三脚プラスわんのニューバージョン
 だいたい、三人じゃないのです。ボクとコボちゃんとアルルだから、ふたりと一匹。で、ボクはひとりじゃ歩けないから、コボちゃんとで二人三脚。アルルが加われば、二人三脚プラスわん。あれ、どっかにこういうタイトルの本があったような気がするぞ。
 盲目のボクはひとりでは歩けない。それを家内のコボちゃんが助ける。そして臆病なボクは盲導犬アリーナとふたりだけの外出に消極的だった。そこで二人三脚プラスわん、という言葉が生まれたのだ。
 盲導犬アリーナがこの世の役目を終えて、もっと別の、世界にいって、きっと幸せに暮らしている今、ボクらはアルルという新しい家族を得た。そして、完璧な安全を保証されているわけではないが、新しい形の二人三脚プラスわんが誕生したのである。

◆ 謎の虫を発見
 で、ここでこのアルルとの朝の散歩について詳しく報告してしまうと、「アルルがやってきた」のネタがなくなってしまうので、今は書かない。それよりも緊急の話題があるのだ。もしかしたら季節物かもしれないので、報告を急ぐのだ。
 5月3日、憲法記念日。朝の散歩に出ると、珍しくも日の丸の旗を掲げている家がある。うわあ、旗日だ、旗日だ、めでたいな。
 我が家から遊歩道を一直線に歩いていくと世田谷線の山下駅に出る。小田急線の豪徳寺駅につながる乗換駅だ。つまり、経堂エリアの我が家から豪徳寺まで散歩するということは、小田急線でいえば、ひとつ先の駅まで往復するということ。万歩計でいうと、およそ6000歩ほどのウォーキングとなる。

◆ テイクアウトのドトールコーヒー
 で、ボクらの毎朝の目的地はこの駅前。遊歩道が途切れるあたりでテイクアウトのドトールコーヒーを飲む。このドトールにはお世話になった。エム ナマエのマグカップを売ってもらったことがあるのだ。
「あら、あの女の子、またスプーンを忘れているわ。あたし、もらってくるわね」
 どうも、少しばかりヌル子さんのアルバイトの子がいるらしい。いや、そうじゃなく、きっと頭がくるくるするくらいドトールは忙しいのだ。売れているのだ。つまり、ドトールのコーヒーがうまいのだ。これはお世辞ではなく、本当のこと。
「もらってきたわよ。ミルクとお砂糖、いれるでしょ」
 コボちゃんがスプーンでコーヒーをかきまわす。
「あら、またいた」
「何?。何がいるの?」
「虫よ、虫」
「どんな虫?」

◆ 毒さえなければ、毛虫の頭も撫でてやる
 虫のことなら少しは分かる。イラストレーターだから、多少は勉強したこともある。一般的な虫ならば、そのほとんどを絵にしたこともある。
 それに、ボクは虫が大好きだ。毒さえなければ、毛虫でも蜘蛛でも頭を撫でてやる。盲目となった今では無理だが、手にのれば目をくっつけて観察する。卵が孵化して、引き出しがミニ蟷螂やミニ蜘蛛だらけになったこともある。まあ、要するにボクは虫に対する偏見や差別がないのだ。

◆ 赤い虫
「あのね、赤い虫」
「おいおい、イラストレーターの奥さんでしょ。もう少し気の利いたセリフはありませんか。例えばバーミリオンみたいな色だとか…」
「そうそう、そのバーミリオン」
「嘘」
「ホント」
「そんじゃ、すっげえ目立つじゃん」
 と、ボクらはこんなしゃべり方はしないのだ。いや、たまにはするのだ。

◆ 外来生物に侵される日本列島
 近頃、日本の海や山、森や野原が外来生物によって侵されているらしい。最近の話題では、小笠原諸島で貴重な昆虫類が外国産のトカゲに食い荒らされているとか。小笠原諸島は太平洋のガラパゴスと呼ばれるくらいの貴重な動植物の宝庫である。そんな、目の青いトカゲに好き勝ってをさせてなるものか。いざ立ち上がれ、日本男児。あれ、なんか違うぞ。
 皇居のお堀では、ブルーギルだとかブラックバスだとか、やっぱり目の青い魚たちが好き放題をやらかしているらしく、在来種の可憐な魚たちが大迷惑をこうむっているとか。そこで出動しているのがお役所の秘密兵器、電撃ボート。ビリビリと放電して、魚たちを一網打尽。その中から不良外人、いや、不良外来種だけを駆除して、残りはお堀に戻してやっているらしいのだ。
 無論、電撃で魚たちが絶命するわけではない。気絶するだけ。そして、その効果は長くは続かない。息を吹き返した在来種は再び元気に日本の皇室をお守りするのだ。それにしても、電撃は電気鰻の専売特許ばかりと思っていたのに。

◆ やばいぞ、背中の赤い後家さん
 けれども、こういうやからはまだ許せる。少なくとも、人間に悪さはしない。けれども、危ないやつらも侵入している。
 その代表格がセアカゴケグモ、英語の名前で呼んであげれば、レッドバックウィドウ。赤い背中の後家の蜘蛛さん。オスであっても後家の蜘蛛さん。ずいぶん派手な衣装に身を包んだ後家さんがいたもんである。
 けれども、オーストラリアではポピュラーな毒蜘蛛であると聞く。危ないやつだから、顔も売れているし、悪名も高いのだろう。乳幼児や高齢者には命の危険も与えると聞く。そいつらが日本に定着繁殖しているのだ。本来は越冬できないはずの南の生き物。その彼らの繁殖を許す地球温暖化。いや、炭酸ガスばかりが悪いのではない。そもそも日本人のライフスタイルが変わったのだ。住居も下水も、どこもかしこも暖かくて、寒がりの南の虫も、ぬくぬくと暮らせる快適日本列島に変貌しつつあるのだ。

◆ アオバアリガタハネカクシ
 ボクが中学生の頃だったろうか。アオバアリガタハネカクシという毒虫が話題になったことがある。おそらく大発生かなんかしたんだろう。その被害が報告され、注意を喚起されたのだ。この毒が目に入ると失明の危険もあるという。
 その夏、窓を開けて本を読んでいたら、ふと手にとまった虫がある。この、とばかり叩こうとして、ボクはハッとした。もしかしたら…。
 ボクはそいつをピンセットでつまんで、ちいさなガラス瓶に捕獲した。虫眼鏡と昆虫図鑑を準備して、早速観察する。やっぱり。本物のアオバアリガタハネカクシではないか。不用意に潰して、その毒液を手にくっつけて、その手で目なんかこすったときにゃあ、どえらいことになるとこだった。うわあ、桑原、桑原。
 そんな思い出があるもんだから、ボクは毒虫だけには敏感であるし、過剰反応もする。
 で、ここで話を戻します。つまり、コボちゃんが発見した赤い虫について、ボクには記憶がないのです。過去に見たことがないのです。

◆ 誰か、赤い小さな虫について知ってることを教えてください
 以下、コボちゃんの証言をまとめます。
1 虫の大きさは1ミリ程度。
1 虫の色は朱色、もしくはオレンジ色。
1 虫の形はフォルクスワーゲンのビートルタイプ。つまりカブトムシ型。
1 足の数はどうやら6本らしいが、あまり小さいのと、コボちゃんの視力の問題で、確実ではない。
1 歩くスピードはかなりなもの。フォルクスワーゲンというよりは、むしろポルシェ。そこから推測するに、天道虫の種類ではないと考える。
1 コボちゃんは同じ虫を我が家 のベランダでも発見している。豪徳寺の駅前と我が家とでは、遊歩道でつながっている。ということは、この虫は世田谷経堂界隈の遊歩道に独特に発生した虫かもしれない。
1 コボちゃんは昨年までは、この虫を見たことがないといっている。
1 新緑の季節に赤い虫であることは、保護色であることを否定する生き方を選んでいる種類だということ。つまり、目立とうとしているわけである。毒のあるやからは一般的には目立とうとする傾向がある。ということは…、こいつには毒のある可能性が…。
 そういうわけであります。このエム ナマエとコボちゃんの疑問と懸念について、何かご存知の方、情報をお持ちの方、虫について詳しい方、このホームページにメイルをいただければ幸甚であります。どうぞよろしくお願いいたします。
 そして、この長ったらしい読み物が、単なる我々の無知蒙昧さからくる無駄話、もしくは与太話であることを願っております。

2006・05・05

 

 

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