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■ 人形劇団ポポロの世界

◆ 天才人形役者、山根宏章氏との出会い
 山根宏章団長率いる人形劇団ポポロ。失礼ながら、この比類なき人形名人、山根宏章氏をボク、エム ナマエはサンちゃんと呼ばせていただいております。
 サンちゃんとの出会いは今から40年前のこと、ボクが高校3年生の夏休みの出来事でした。美術部の合宿で滞在していた群馬県榛名湖のユースホステルで、ボクは山根宏章氏の華麗なる人形操作を目撃したのです。いや、正確に表現しますと、それは人形ではなく、コウモリ傘と玉子の殻でしたが。

◆ コウモリ傘とタマゴのラブストーリー
 舞台もない、音楽も照明もないユースホステルのミーティングルームに、突如として現れたコウモリ傘の紳士。そして紳士は真っ白な肌の美女、タマ子さんに出会うのです。たちまち二人は恋に落ちました。甘い抱擁、交わす口づけ。けれどもやがて訪れる恋の終止符。冷たく立ち去るコウモリ傘。泣き崩れるタマ子さん。やがて見えない幕が閉じられ、ミーティングルームに拍手の音が響きます。
 この瞬間から、ボクはサンちゃんの虜になってしまうのです。いや、人形劇のハートにしびれてしまうのです。そしてその秋、人形劇団プークの舞台を体験して、ますますボクは人形劇という芸術に魅了されてしまいました。

◆ 人形劇団ポポロの立ち上げ
 サンちゃんこと山根宏章氏はやがて結婚、独立して、人形劇団ポポロを立ち上げます。そして名誉なことに、第一回公演からボクは宣伝美術でお手伝いできることになったのです。そうです。当時のボク、エム ナマエも既にフリーのイラストレーターとして独立していたのでした。
 サンちゃんは比類なき人形の天才であると同時に、役者としても超一流です。いや、偉大な脚本家でもありますし、また演出家でもあり、プロデューサーでもあります。その人形劇の総合的クリエーターが繰り広げる人形舞台です。楽しくないわけがありません。ボクは元気な限り、人形劇団ポポロのお手伝いをさせてもらっていました。
 それらひとつひとつの舞台、人形の動き、役者のセリフ、美しい照明は今でもボクの網膜に焼き付いています。おそらく永遠に忘れることはないでしょう。けれども、残念ながらボクは失明してしまいました。

◆ エム ナマエが失明してから20年
 それから20年、ボクは全盲でいることには慣れました。けれども、女性の姿を目にすることのできないさびしさ、オートバイに乗れないつまらなさ、そしてポポロの舞台を見ることができない残念さにはまだ慣れていません。
 目が見える頃、ボクはポポロのために何枚もポスターをデザインし、絵をかいてきました。そしてポポロは失明したエム ナマエにも仕事を依頼してくれます。ボクは全盲のイラストレーターとしてポスターのイラストレーションを制作しました。そして舞台にも招待してくれます。家内のコボちゃんはたちまちポポロのファンになってしまいました。
 ですが、やはりボクは残念でなりません。どうあがいても、その舞台を見ることができないからです。どうぞ、可能な限り沢山の人々、子どもたちにポポロの舞台を見ていただきたい。今はそう願い、祈るばかりです。
2006年7月2日 エム ナマエ

※一部、「あの世でもずっと王様、寺村輝夫」と重複する箇所があります。



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