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■ 寺尾聡の四半世紀ぶりのアルバム
◆ ルビーの指輪が心に流れた
 なんでだかは分からない。ただ、『ルビーの指輪』のメロディーの冒頭部分が心に流れる。それも、やたらと流れるのだ。なんでだ。いや、やっぱり分からない。
 心当たりはとあるCMソング。まるで関係のない商品だし、主旋律なのだが、歌い出しのメロディーとリズムがそっくり。パクリではないかと思うくらい。瞬間、はっと胸をつかれ、反射的に
「曇りガラスの向こうは風の街、問わず語りの心が切ないね」
と頭の中で歌ってしまう。いや、まずいなあ。確か、あのレコードがどこかにあったが、もうプレイヤーなんかないし。それに、アルバム『リフレクション』は何年前のリリースだっけ。
 少し心を澄ませて脳細胞に潤滑油を供給してやる。すると真夏の太陽と波音がしてきた。そうだ。あのアルバムをウォークマンで、汗に濡れながら聴いた砂浜は、ワイキキ。となると、あれは絵本『ピカリング博士』の仕事をした夏。そうか。絵本『ちょっとそこまでパンかいに』もあの年の仕事だったぞ。

◆ いきなり寺尾聡の声がした
 そんなことばかり考えていたら、ある昼下がりにFMの流れるスピーカーから寺尾聡の声が聞こえてきた。あれれ。ボクの予知能力というか透視力には以前から少しばかり自信はあったが、そんな馬鹿な。でも、空耳ではないらしい。寺尾聡が『リフレクション』を25年ぶりにセルフカバーしたというのだ。語る声は還暦を過ぎたはずの寺尾聡の声。でも彼は男から見てもカッコいい。たまらなくボクの心はくすぐられてしまったのだ。

◆ CDは本日リリース
 FM電波で流れるのは新しいアレンジの『ルビーの指輪』。いやあその声はまるで変わっていない。しぶくて煙草の匂いがする。でも、この高音は禁煙してないと出ないよな。と、禁煙で声のよくなった自分が考えている。
 CDリリースは今日だという。今すぐ、アルバムの全曲を聴きたい。
「コボちゃん、寺尾聡が新しいアルバムを出したから、ついでがあったら買ってきて」
◆ ボーズのスピーカーから流れる『ルビーの指輪』
 寺尾聡のアルバム『リクール・リフレクション』は売り切れていた。このアルバムをデジタルサウンドで聴き直したいと思っていたのはボクばかりではなかったらしい。数日後、ボクはCDを手に入れた。
「ちょ、ちょっと。ボリュームさげてよ!!!」
 いきなりコボちゃんが仕事部屋のドアを開いて叫んだ。それくらいボクは大音量にしていたのだ。
 アレンジが特に新しいわけでもない。でも、だからいいのだ。オリジナルと比べるのでもなく、ただ昔の感覚と記憶が戻ってくる。ボクにとっては別に新しい寺尾聡でなくともかまわないのである。
 1981年にリリースされた音楽アルバム『リフレクション』と絵本『ピカリング博士』が2006年に装いも新たに登場した。単なる偶然の一致である。けれど、ボクにとっては胸の騒ぐシンクロニシティーなのだ。25年前、ボクは部屋に『リフレクション』を流しながら絵本『ピカリング博士』の絵をかいていたのだから。

◆ 心澄ませば
 心を澄ませば、出来事には不思議な共通性がある。ただ、人は目の前の人参を追跡するのに必死であって、そんな単なる偶然の一致にしか思えない類似に心を留める余裕にはなかなか恵まれない。目の見えないことは不便以外の何物でもない。ただひとつだけ、心を済ませるのには便利かもしれない。さあ、またオープンマインドになって、新しい創作意欲に心身を委ねることにしようか。 24/12/2006 01/01/2007 脱稿


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