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■ 喫茶店みたいにリラックスしてお話できました

◆ 再放送を録音する
 2008年1月6日の日曜日朝、MDをミニコンポにセットする。録音スタンバイ。放送開始と同時にポーズを解除。機械の作動する音を確認してから『視覚障害者のみなさんへ』の再放送にボクは耳を傾けた。
 本放送を逃したわけではない。ただ、録音を逃しただけだったのだ。昨年12月30日の夜は透析で、ボクは病院のベッド。放送時間が透析終了時間と重なっていたため、ボクとコボちゃんは透析質から控え室に移動しながら、小さな音量でラジオを聴いていた。当然、録音のできるはずがない。それどころか、落ち着いて聴ける場合でもなかった。そういう事情で、再放送を録音することにしたのだった。
 それにしても、まるで喫茶店でおしゃべりしてるみたいに、ボクも木村裕一氏もリラックスしてしゃべってる。自分たちの声を耳にしながら、ボクは録音当日のことを思い出していた。

◆ 録音当日
 2007年12月4日、放送センター西口玄関で絵本作家の木村裕一氏と待ち合わせる。NHKで顔を合わせるのは何十年ぶりだろう。1970年代、彼が工作の時間を担当し、ボクが『お母さんと一緒』で仕事をしていた時代、偶然にNHKの大食堂で出会ったことがある。おそらくは、そのとき以来のことだと思う。
 ディレクターは中園蝶子さん。ボクが『視覚障害者のみなさんへ』に出演するのは初めてのことではない。だから中ぞのさんとは以前からの知り合い。2007年のエム ナマエ個展『絵本作家宣言』もご覧いただいている。今回の企画も、その展覧会がきっかけとなった。エム ナマエを失明以前から知っている誰かと番組に出演し、絵本について語ってほしいとの要望である。となると…、ボクは考えた。やっぱり木村裕一氏しかいないだろう。けれど、彼は晴眼者。果たして企画は成立するだろうか。けれども、さすがは中ぞのさん。彼女の熱意で、この番組では珍しい企画が無事に通貨したのだった。
 その中ぞのさんがタクシーで到着したボクとコボちゃんを迎えてくれる。木村氏は愛車のジャギュアで現れた。ひとりである。彼のスタッフはステキな女性がそろっているから、これは残念。そう伝えたら、みんな忙しいのだそうだ。そういう木村氏自身がいちばん忙しいので、企画に賛同してくれたことに心より感謝する。

◆ スタジオで
 打ち合わせは缶コーヒー。スタジオによってはお茶やコーヒーの出る所もあるらしいのだが、ここにはない。でも広い。ボクはマイクの位置を確かめて椅子に座った。缶コーヒーをぐびり。それから録音の段取りを聞く。それにしても木村氏は眠そう。というか、今にも眠りに落ちそうな気配。それも当たり前。彼の師走は本当に走っているのだ。
「ねえ、起きてる?」
「うん、起きてる」
「ここまでよく運転できたね」
「うん。運転は大丈夫」
 彼の特技はどこでも眠れること。打ち合わせのテーブルでも飲み会の席でも、瞬間にして熟睡し、疲労回復する。けれども、まだ大きな交通事故を起こしたとは聞いてないので、本当に運転中の居眠りはないのだと思う。

◆ 本番スタート
 打ち合わせのはずだったが、なんとなくしゃべっているうちにスタッフの気配が消えている。
「せっかくだから録音しましょう」
 というわけで、流れるように本番となった。すると驚き。木村氏はしゃっきり。まるで別人のように滑らかにトークしている。そして、ふたりで自然に、普段着のしゃべりをしていたら、あっという間に予定の時間が経過していた。
「お疲れ様」
 スタジオの扉が開き、よく知っている声。青木裕子アナウンサーである。絵本の世界、朗読の世界と、エム ナマエも木村裕一も青木アナウンサーも、みんな共通の友人だらけ。おまけに番組のプロデューサ、迫田さんは青木アナウンサーと仲良しとか。ボクはコボちゃんからも青木アナウンサーからもOKをもらってニッコニコ。友人はありがたい。

◆ 放送は年末年始
 それにしても苦労したことがひとつ。それは本放送が年末、再放送が年始のため、去年とか今年とか来年という単語が禁句だったこと。具体的に2006年がどうしたとか、2007年はああしたとか、2008年はこうなるだろうという会話なのだ。まあ、来年のことをいうと鬼が笑うそうだから、それもいいだろう。でも、年末ともなれば、誰だって鬼に笑われる運命にあるのだ。

◆ 日曜日のNHKラジオ第二放送は面白い
 『視覚障害者のみなさんへ』は目立たない番組かもしれない。けれどもNHKラジオ第二を軽んじてはならない。テレビがバラエティーだらけでアホらしくなったら、民放のコマーシャルに飽き飽きしたら、ぜひともNHKラジオ第二にダイアルを合わせてもらいたい。外国語が聞こえてくる場合もあるが、はっとするほど面白い、もしくは興味深いテーマに遭遇することもある。ボクは以前、日曜日の朝にやっていた『高校倫理』にはまっていた。哲学という命題は、いつでも何度でも学んで損することがない。けれども残念ながら、現在は編成が変わり、日曜の朝が少しだけつまらなくなってしまった。
 『視覚障害者のみなさんへ』は日曜日の午後7時半から。そして8時からは『カルチャーアワー』。向学心のある人なら、必ず傾聴するであろう話題ばかり。そして9時からは『文化講演会』。これも目からウロコの1時間。いや、耳からコルクの1時間。そして10時からはお勉強に疲れた頭へのリラクゼーション。NHKラジオ第一にダイアル回せば、ラジオ文芸館。言葉によるエンターテイメントの世界で遊ぶのだ。さあ、テレビを消して、ラジオをつけて、イマジネーションのトレーニングといたしましょう。
※ この記事は以前の放送告知記事を加筆修正したものです。 2008/01/10


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