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■ 俺は酔ってない

◆ 落語のネタにされてます
 酒の席でしゃんとして、真面目な顔で酒を断る人がいう。
「いえいえ、もう私はべろべろに酔っ払っておりますので、酒はもう結構でございます」
 けれども、目の前に倒した徳利を並べ、へべれけに酔っ払っている人の台詞といえば、次の通り。
「俺は、酔っちゃあいねえよ」
 これは落語、先代金馬の十八番『居酒屋』の枕でお馴染みの場面である。ちなみに落語で枕とは、イントロの部分を指す。
 さて、皆さんご存知のように酒飲みのことを上戸という。飲んで泣くのが泣き上戸。やたらと笑うのが笑い上戸。人と見れば絡むのが絡み上戸。小言上戸、叱り上戸、説教上戸というのも当然いるだろうし、怒り上戸、口説き上戸、助平上戸なんてのもあるかもしれない。
 ケッコー、ケッコー、コケッコー。断りながら飲んでいるのがにわとり上戸。いやいや、もう沢山です。こういって、片手を振り回しながら相手の酒瓶を断っているのが壁塗り上戸。中には酔っ払うとやたらに脱ぎたがる脱ぎ上戸というのもいるらしいが、残念ながらボクは遭遇したことがない。

◆ 酒に甘い日本の風土
 喫煙習慣の真ん中にいた頃、タバコに厳しく酒に甘い世間の風が気になった。
 電車やバス、映画館で煙をはいたらつまみ出されるが、酒臭い息をはいてもつまみ出されることはない。とにもかくにも、日本の風土は酒飲みに寛容であり、テレビもラジオも酒のCMには甘い。
 考えてみれば、これは不公平な話である。和を大切にする日本人どもよ、場を大切にするのも、ええ加減にせえや。嫌煙権は認められているのに、嫌酒権とか禁酒権を叫んでも無視される。ふざけんな。お前らも税金を飲んでるんだろうけど、俺たちだって税金を煙にしてるんだぞ。第一、禁煙車両ばっかりなのに、国鉄時代の赤字を誰が負担してやってると思ってるんだ、馬鹿野郎。けれども酔っ払いには何をいっても無駄だ。ところがだ、タバコを吸うだけでは酔えもせず、素面であるからして、喧嘩にもならない。ふん、ふん、ふん。この糞ったれめ。
 酒飲みは無敵だ。立小便はするし、セクハラはやるし、電車で吐くし、とにかく酒飲みは凶暴だ。酒飲みは非道徳だ。酒飲みは卑猥だ。酒飲みは嫌いだ。けれども、俺も酒は…、飲む。特に寿司をつまみに飲む酒は最高。いやあ最近、タバコを吸わなくなってから、隣の煙が気になります。

◆ 死刑にしてもなくならない
 役人、警察官、学校の先生。テレビやラジオでやたらと公務員の酔っ払い運転が話題にのぼる。酔払い運転を取り締まる警察官が酒酔い運転。酔払い運転をしてはならぬと教育する教育委員がジグザグ運転。それっとばかり、ここぞとばかり、マスコミは血祭りにあげる。
 とにかく酔っ払い運転がなくならない。けれども当然、当たり前。本物の酔っ払いは、決して自分を酔っ払いとは思わないのだ。
 今後、酔っ払い運転を重罰化しようとも、死刑の導入をやろうとも、酔っ払いが酔っ払いであるうちは、絶対に酔っ払い運転のなくなる日はやってはこない。正しい判断のできない連中が酔っ払いなのだから。
 国内の自動車メーカーでも、とうとうインターロックの開発を開始した。複雑な数列をインプットしてからエンジンをスタートさせる。センサーに息を吹きかけ、少しでもアルコールを検知するとエンジンを始動させない。インターロックとは、そんな装置である。
 北欧諸国では既に導入が始まったと聞く。酒酔い運転の重罰化、死刑採用の有効性に疑いがある以上、国内でもインターロックの早急な義務化が望まれる。少しでも、失わなくてもよい命を守りたい。 19/09/2006



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