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■ 汗だらだらの冬がくる

◆ 寒い夏 エム ナマエ
 寒い夏といっても、冷夏のことではない。都会の夏は暑くて寒い、ということだ。
 昔の家には扇風機もなかった。あるのはせいぜい団扇と風の通る縁側と、裸を隠す簾くらいのもの。たらりたらりと汗を流し、たらいで行水をして、暑い暑いと文句をいいながらも、静かに秋はやってきた。
 小学5年生のとき、待ちに待った扇風機が茶の間にやってきた。律儀に首をふって送ってくれる風の、なんと涼しかったことよ。6年生のとき、台所に電気冷蔵庫がデビューした。扉を開くと氷のある生活の、なんと絢爛豪華だったことよ。けれども、贅沢も幸せも、すぐに色あせ日常に埋没する。

◆ コンクリートジャングルのブラック・アンド・ホワイト
 コンクリートジャングルのサマータイムは白と黒、光と影の織り成す世界。見えないボクの目がくらむほどのまばゆさと、家庭の熱交換器から噴出する熱気が融合し、不快指数をぐんぐん上昇させる。そう。エアコンが各家庭に装備され、カークーラーが普及してからというもの、繁華街の夏は確実に炎熱地獄へと変貌した。けれども、上着を忘れて外出すると、風邪をひくのもヒートアイランド特有の現象である。

◆ 見えなくてよかったファッション
 クールビズ、だそうである。目の見えないボクは無責任にいうが、どうやら国会とか役所では奇妙で中途半端なファッションが流行っているらしい。そもそも、湿度の高いこの日本で西洋の正装を喜んで真似してきたことがおかしい。真夏にぴっちりとワイシャツを身につけ、ネクタイで首まで絞めて、これで涼しい思いをしたければ、北極で仕事をするしかない。
 誰のことでもないのだが、少し頭が足りないようだ。レストランでも喫茶店でも、劇場でも病院でも、開通以来無事故を誇る超近代鉄道の車内でも、完全武装、もしくはカーディガンなどを羽織り、夏向きの軽装では風邪をひくような環境設定で勤務する方々がおられる。皆さん、寒くはないのだろう。いや、むしろ快適なのに違いない。けれど、軽装で外出してきて、上着の準備もなかった利用者は、ほとんど発病寸前となっている。なのに現場には想像力と観察力がない。いや、知っているのに、知らんぷり。何故ならば、設定をゆるめれば、自分たちが汗だくになるからだ。ならば、なんで軽装にならないのさ。偉い方々がクールビズの破廉恥ファッションに耐えているかもしれないのに、ウェイトレスがビキニとなり、車掌がステテコ姿になったっていいじゃないか。金を払って風邪をひく利用者がいるよりは増しというもの。そう。夏は日本全国津津浦浦、みんな薄着でいるべきだ。

◆ これからの冬が心配
 まだまだ残暑が続く。だが、ほとんどクーラーなしで過ごしている自分に夏風邪の心配はない。けれど涼しさに向かっている今、ボクは眼鏡も曇り、体温調節に苦慮するような無駄な暖房と、ますます切実になりつつある化石燃料の枯渇に心を暗くしている。       ※社会新法掲載分

 


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