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原稿用紙プライベート盲導犬アリーナ日記
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■ 叱れない日本
◆ ラーメンなんて並んで食べるもんじゃない
 この町にもうまいラーメン屋があって、いつも行列ができている。並ぶのが大嫌い。ラーメンなんて、並んでまでして食べるものではない。そう宣言していたボクら夫婦も降参し、とうとう並んでしまった、そんなラーメン屋である。その店先での出来事だ。

◆ 巷に風船人間大増殖
 変則的な並び方の若者を家内が注意した。すると彼は家内を睨み、河豚か風船みたいにぶんむくれたらしい。
 商店街にあって、行列が広がれば両隣の迷惑になるので、正しく並んでください。
 店主からのそんな張り紙がしてあって、客は誰でも守っていた。けれども、当然の指摘に想定外の立腹をする若者。彼はおそらく親から叱られたり、先生から注意された経験がないのだろう。

◆ 暴走自転車VS頑固親爺
 かと思うと、遊歩道の真ん中に立ち塞がり、ルール無視の侵入自転車に注意を与える老人もいる。昔ながらの頑固親爺健在の構図だ。若者に限らず、この遊歩道では不道徳が目立つ。老人であろうと、盲人であろうと、背後からベルを鳴らし、そこのけそこのけと風を発して擦り抜けていく暴走自転車があるのだ。

◆ サイクリングにも道路交通法は適用される
 盲導犬と歩こうが、白い杖をついていようが、暴走自転車には通用しない。これまで、ボクはどれだけ命の危険にさらされてきたことだろう。ブレーキもかけずに路地から飛び出す神風自転車。歩道の人間相手にスラロームを気取る自転車レーサー。ケータイをかけながらのの片手自転車。交通事故死の二割が自転車によると聞いたが、なるほど、容易に納得がいく。
 車の運転には免許が要る。自動車とは本来、人間が動かしてはならない殺人マシンなのだ。けれども、ライセンスを必要としない自転車にも道路交通法は正しく適用される。無論、片手運転は厳禁。酒酔い運転など言語道断、許されるはずもない。
 酔っ払い運転による場合、交通事故は事件として扱うべき。死亡事故は殺人だ。

◆ ライセンスを返上した東君平さん
 こんな意見を耳にしたことがある。ボクが兄貴として尊敬していた亡き東君平さん。画家で詩人、絵本作家でもあった彼は大の運転好きであったが、酒飲みでもあった。その君平さんが突然ライセンスを返上する。
「子どものための仕事をしている自分は、絶対に交通事件を発生させてはならない」
 これが酒を愛した彼の決意と選択であったのだ。

◆ 見て見ぬ振りの大人社会は航海不能の日本丸
 酒酔い運転をやめろといえない会社の同僚。飲ませてしまう酒場の店主。暴走自転車を注意できない大人たち。自転車の取り締まりに背を向けてきた警察官。職務を忘れ、責任を放棄してきた社会により、失われなくてよい命が目の前から次々に消えていった。
 我が子に好かれたくて、家庭はしつけを忘れた。学校では教師は生徒を叱れない。暴力を恐れ、世間は子どもを注意できない。政治家は人気ばかりを気にしてる。勇気ある大人をなくし、叱れないこの国は「未来」という海のどこへ向かおうというのだろう。日本丸はやがて進路を失い、航海不能となっていく。

社会新法掲載分に加筆

 



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