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◆ 選挙を考える猫の目気分 2004/07/07

 今度の日曜日は選挙の日。みんな、いくだろうか。ボクもいくだろうか。そう、自分について語れば、おそらく一度だけは除いて、すべての選挙で投票してきたと記憶している。たとえ該当者が考えられないときでも、ただ一票の白票を投ずるため、ボクは出かけていった。すると、盲人のボクをサポートする係員がこういった。

「あ、棄権するのですか」
 ボクはムッとして見えない目でその人間を睨み返した。
「棄権なんかしてませんよ。この白い紙はボクの投票です。意志表示です」
 すると、その人間はまずいことをいった、とでも思ったのか、それとも議論を避けようとしたのか、こんな言葉をつぶやいた。
「そうです、そうですとも。棄権なんかじゃありませんよね」

 真正面から議論をしてやろう。そう構えていたボクの気分に水をかけられた。そこで、白票を係員に手渡す。そして、その人間はボクの手を添えて確かにその一票を投票箱に投げ込んだのだ。

 今度の選挙に友人が立候補した。少年時代からの友人である。43年以前、この少年は友人の生徒会長選挙のため、応援演説をした。その見事な語り口と情熱と正義感にボクは感激した。たかだか12歳の少年にこんな志が燃えているのだ。将来、彼は政治家になるだろう。ボクは確信した。

 けれど、いつまで待っても彼は政治家にはならない。フジテレビのニュース画面に登場したり、優れた報道番組を立ち上げたり、ニューヨークの支局長になったり。ボクがニューヨーク個展を開いたときも、間接的に応援をしてくれた。何故に間接的かというと、ボクと彼は入れ替わりでニューヨークを訪問し、立ち去ったのだ。

 その後もボクは何度も彼と会った。彼も会いにきてくれた。ボクの絵が好きだ、といってくれるのだ。その彼がいきなり告白した。
「選挙に出るよ」

 43年前のボクの予感が的中した。とうとう彼が政治家を目指すのだ。ボクは真心から彼の当選を祈っている。ただひとつだけ気掛かりなのは、彼が公明党から出馬することだけ。

 ボクは現在の公明党を支持できない。あの小泉政権を支援している事実だけは許せない。選挙が目の前の現在でも、選挙のためのあがきを続けている小泉政権。年金問題、片手落ちの立法、イラク自衛隊派遣だけではなく、自衛隊を多国籍軍に投入。次々と出鱈目な決定をしていて人気が落ちると、すぐさまに人気取りの瀬戸際策を次々と公表する。バラバラになっていた家族を再会させたり、9年前の狙撃犯人を逮捕したり、社会保険庁の首のすげ替えをしてみたり。ひとつひとつは悪くはありません。けれど国民はそれほど単純で馬鹿じゃないと思いたい。もう騙されない。何度も騙されて、繰り返し騙されて、そんな国民をもう騙せないと思ったのか、かなりジタバタしているようにも見える、そんな自民党を何故に公明党は支持し続けるのだろう。

 現在の立場を利用すれば、公明党は確実に日本を左右することが可能である。自民党のご意見番として有効に自分たちの力を発揮できる。もしかしたら、公明党はそのタイミングを計っているのだろうか。ボクの友人はその方向転換の舵取りの先端を切るつもりではないのか。いろいろとボクは可能性を探ってみた。けれど、真実は分からない。そんな中で彼が公明党の真価を問い、日本の政治を変えてくれる。そう信じてもみたい。そしてボクは彼を応援する決心をした。

 けれど、まだ迷っている。彼に投じることは、ボクが指示できない政党に投票すること。それはボクの意志表示にはならない。けれど、彼には是非とも当選してもらいたい。ボクはジレンマに陥った。そしてまだその谷底から這い上がることができない。7月11日の日曜日その日まで、ボクは迷い続けるだろう。考え続けるだろう。誰に投票しようか。どの政党を支持しようか。それはその日まで分からない。ボクの心は猫の目のように変わるのだ。

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