エムナマエのロゴ
原稿用紙プライベート盲導犬アリーナ日記
ギャラリー新着情報サイトマップホーム英語
 
  (8)



◆ 心よりお見舞い申し上げます

 昨年の夏をボクは北海道、旭川で過ごしました。盆地である旭川の夏は以外にも暑く、北海道には似合わない印象でした。ところが冬になって耳にする天気予報によると、旭川の気温は驚くほど低いのです。これも盆地のせいでしょうか。お世話になった方々が今、猛烈な寒さと闘っておられる。ボクは思わず北国の厳しさを想像して、ぶるっと身震いしてしまいました
 それにしても予想を裏切って到来したこの厳冬。心に浮かぶのは北の海で働く漁船と乗組員、山の人々の暮らし、北国の鉄道員、寒風にさらされながら高圧線の管理をする電気会社の人。
 気象観察、記録以来の寒さが続いているとか。ボクの仕事部屋にも寒気が侵入し、指先の冷たさに耐えながらキーボードをたたいています。それでも暖房の部屋の中。戸外で働く人の寒さはいかほどかと、気が遠くなる思いで想像してしまいます。
 現在のボクの健康状態は寒さをもっとも敵とします。ですが、幸運にもボクはデスクワークで身を立ててきました。厳しい冬に、部屋で仕事のできることに思わず感謝してしまいます。けれども、高齢になっても、病んでいても、寒さの中で仕事をしている方々がたくさんいらっしゃいます。ボクには、その皆様のご無事を祈ることしかできません。
 どうか皆さん、心も身体も甘えられる優しい春がやってくるまで、寒さに負けず腐らず油断せず、この試練の季節を乗り越えてください。小さな仕事部屋から、皆様のご健康とご多幸をお祈りしています。

◆ 毎日震えています
 今から考えると信じられませんが、子どもの頃、ボクは冬でもランニングで過ごしていたくらい寒い季節が好きでした。
 けれど、この病気をしてからずっとボクは寒さが苦手です。毎年夏が過ぎ、秋の気配が近づくにつれ、どんどん悲しくなっていく。それは冬がやってくるから。
 目覚めれば、朝の窓ガラスに氷模様。庭に出れば、池には氷のふた。登校の道で、霜柱の潰れる音。小さかった昔から考えると、これまでずっと暖冬が続いていました。
 ところが、この猛烈な寒さはどうでしょう。いきなりの厳冬です。これは気象庁でも予測していなかった寒さではありませんか。

◆ 暖冬と厳冬
 東京のド真ん中、内幸町に住んでいた小六時代、ボクは新潟県の湯沢に連れられていきました。スキーをするためです。宿屋には二階から入りました。屋根まで雪が積もっていたからです。
 1977年の暮れ、福島県裏磐梯高原にペンション絵夢が開かれました。両親と弟の経営です。ところが雪がありません。ボクが大学生の時代、年末になると磐梯山のゲレンデは真っ白で、ふもとまで滑ってこられたものだったのに、その雪がありません。あの頃から暖冬だったのです。
 それでも高原、山は山。年が明ければ2メートル、3メートルと雪は積もります。そして雪国の仕事の大半は雪との闘い。屋根に積もった雪落とし。屋根から落ちた雪の撤去。この大変さは経験してみなければ分かりません。
 昨年の秋、ペンション絵夢は閉館となりました。現在、無人のペンション絵夢が雪に包まれて冷えて固まってたたずんでいます。例年にない積雪。そんな中で、どうか建物だけでも潰れずにいてくれと、ただ願うばかりです。
 ペンション絵夢が開かれている間は暖冬。閉館した冬は厳しい寒さと積雪。これには何か因縁があるのでしょうか。ボクは首をひねります。

◆ 尊い人命が失われています
 それにしても毎日のように雪落としと除雪で人が亡くなる悲しい知らせ。ほんの少しでも、雪国の厳しい暮らしを知っているから、ボクは思わず合掌して、そのご冥福を祈ります。
 小泉政権は改革を唱え、小さな政府を目指すといっているようです。けれども増税の春は目前。今、日本中を混乱させ、尊い命を奪っている厳冬という災害に立ち向かうためにも、小さな政府で大丈夫でしょうか。既に地方自治体は除雪の予算を使い果たしているとか。高齢化が進行する日本で、行政サービスに期待できなくなれば、弱者はいかに生きていけばよいのでしょう。
 除雪で命を落としておられるのは高齢者ばかり。ボクの耳にはそう聞こえています。議事堂や首相官邸や霞ヶ関のある東京は別にして、日本中が厳冬と積雪で苦しんでいます。活動しているのは地方自治体と自衛隊。こうなると、無闇な公務員の節減は危険です。

◆ 税金に見合ったサービスを期待するのは当たり前
 不景気になれば、民間は公務員を羨み憎みます。ですから景気に見合った、もしくは税金に見合った賃金体系を公務員に適用することは必要でしょう。けれども無闇に公務員をカットしていいことにはなりません。行政サービス。これがオフィシャルサーバントである公務員の最優先業務です。これらがないがしろにされては、なんのための政府だか行政だか分からなくなってしまいます。
 今、日本中を震えさせているのは厳冬。けれども、いつ巨大地震が主要都市を根元から震えさせるか誰にも予測できません。そのとき失われる尊い人命と健康、民間財産と国家予算は想像も及びません。
 これまで無駄に使われてきた税金。行方不明の税金。誰かのポケットに入ったままの税金。その巨大な無駄遣いが将来必ず出現する巨大災厄にどれだけの打撃と不利益を与えるのか。
 ボクには、現政権が増税によって、過去の巨大で無謀な無駄遣いに蓋をしようとしているように見えて仕方ありません。そうでないことを期待するのですが、ボクの中で不安は増大しています。この厳冬と、震え上がる日本列島と毎日のように奪われる人命に、政府は即応し、正しい政策を見せていただきたい。日本という国家は何を最優先とし、何を目指して進んでいくのか、その道筋を見せてほしい。
 国民のひとりひとり、市民のひとりひとりの命と小さな幸せを守れずして、国家存続の意味はありません。私たちは何のために生まれ、生きていくのか。国家は何のために存在するのか。個人と国家の最優先課題の決定。2006年正月に到来した厳冬は、この課題を我々に問い質しているのかもしれません。
2006/01/09・成人の日


  Copyright © emunamae