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■絵門ゆう子さんの本  「がんと一緒にゆっくりと」   2006/01/18
 2003年2月8日、明大前のキッドアイラックホールで青き裕子さんの朗読会が開かれた。作品は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。
 2時間の語り。やまない拍手。そんな状況でボクは絵門ゆう子さんを紹介された。彼女は青木さんの後輩アナウンサーだったのだ。
「私、全身に癌が転移してるんです」
 会話は深刻だが声は明るく笑っている。
 ボクは目の前のパーソナリティーから清浄なエネルギーを感じた。
「ボク、癌でも貴方は死なないと思う」
 思わず口にしていた。たちまちお互いの心が開ける。ふたりとも、一度は医師から「余命」を宣告されたことのある、生きることに真正面から向き合った経験者でもあるのだ。苦しみにも喜びにもシンパシーがあった。
 絵門さんはボクの絵を見て決めた。
 著書「がんと一緒にゆっくりと」が新潮社から出版されたのはそれから間もなくのことだった。
 表紙はエム ナマエ。新潮社の装丁ルームはボクがいちばん気にいっている絵「階段のある街」を選んでくださった。
 「がんと一緒にゆっくりと」は世の中に爽快な衝撃を与えた。そしてボクは今も彼女と仕事のできる喜びを与えられている。

◆ 好評の新刊「がんでも私は不思議に元気」
 青木アナウンサーの導きにより、絵門さんは朗読に目覚めた。最初の朗読コンサートではエム ナマエの著作「ナクーラ伝説の森」が選ばれた。けれども絵門さんはエッセイばかりではなく、童話も書く。絵本も出版する。病院で、ホールで、彼女の自作による朗読コンサートは次々と発表されていった。
 ある日、新潮社の装丁ルームから連絡があった。絵門さんの新しい本が出るらしい。そして今回もボクの絵を表紙にしてくださるのだ。
 慎重に作品が選ばれる。新潮社だから慎重。ああ、くだらない駄洒落。泣けてくる。ええと、600枚のポジフィルムから選ぶのですから慎重になるのです。ああ、しんど。
 さて、「がんでも私は不思議に元気」が出版された。
 新潮社刊 税込み価格1365円 絵門ゆう子作 2005年12月20日初版
 病との共存とその問題提起が具体的に描かれている貴重なエッセイ。好評発売中につき、どうぞ書店で手に取ってご覧あれ。もちろんエム ナマエの表紙にもご注目。

◆ エッセイとイラストレーションのコラボ、エッセイ集「ありがとう」の春がくる
 昨年秋、PHP研究所からの依頼でイラストレーション制作に向かっている。絵門ゆう子さんのエッセイ集に、オリジナルのイラストレーションをちりばめるのだ。できれば絵本のような作品に仕上げたい。これがボクと絵門さんの共通理念である。
 18の項目にわたって語られる様々な「ありがとう」。18回、1年半の間、PHPに連載された労作である。読めば読むほど深い感銘を受ける。
 見えるものすべてへの「ありがとう」。現在過去未来への「ありがとう」。命と未来への希望と楽観。今を生きることへの感謝。
 それらは共感できる事柄ばかり。死を常に背中に感じながらの命を通じて見えること。その共有。もしも誰かがボクと絵門さんの著作から同じスピリットを感じることがあるならば、それは病という共通の基盤からくる貴重な気づきのせいであろう。
 病を通じて見る人生と世界の美しさ。絵門さんのエッセイに満ちている感謝の心。ボクはそれをイラストレーションにしてみたい。
 何度もエッセイを読み返し、イラストレーションをいろいろな角度から構想してみた。なかなか決まらない。もっとできることがあるはず。もっと見えてくるものがあるはず。悩みながら、考えながら、イメージの世界で迷ってきた。けれども、もう時間がない。締め切りは来月いっぱい。勇気を出して制作開始。体調も心の準備も万全。
 もうすぐやってくる春に、絵門さんにボクのカラフルなイラストレーションの数々を見ていただきたい。それは絵門さんがボクの勇気であり、すべての人への希望であるから。 ※ 過去の記述と重複することばかりの文章ですが、ボクの絵門さんへの思いの形とお許しください。 2006/01/18


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