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盲導犬アリーナが乗車拒否された


いざ、タクシー近代化センターへ。

 伊勢丹を出てタクシー乗り場に向かった。と、コボちゃんの様子がおかしい。
「いいです。次のタクシーに乗りますから」
 盲導犬に対する乗車拒否だな。ボクは直感した。
「会社と車のナンバーを早く」
 ボクはコボちゃんに言葉をかける。同時にポケットからICレコーダーを取り出した。だが、見当はついている。おそらくチェッカーグループに違いない。これまでも、ボクらとアリーナにとってのタクシーのトラブルというと、大体が個人タクシーかチェッカーグループなのだ。
「ペケペケ社のABC番」
 ボクはICレコーダーに向かって復唱する。
「チェッカーグループよ」
「やっぱりな」
 ボクは次のタクシーに乗ると即座に携帯電話で電話をした。勿論、タクシー運転手の最も恐れるタクシー近代化センターへである。乗車拒否に遭遇した日時と場所、タクシー会社とナンバーを告げた。電話が終ると運転手さんが声をかけてきた。誠実な印象のタクシードライバーだ。
「ありゃひどいですよ。私も近代化センターへ電話してやろうかと思ったくらいでしたから。足立ナンバーですよ。ごくたまに悪質なのがいるんです」
 翌日、近代化センターから確認の電話があった。事件にはボク以外の目撃者もいるのかと尋ねてくる。つまり、ボクが単独ではなかったことへの確認だ。ボクはカチンときた。
「ということは、つまり盲人は単独で何かをされたとき、抗議もできない、ということですか」
「そ、そういうわけではありませんが…」
 ボクは事件当時の状況と複数の目撃者がいたことを告げた。目撃者には伊勢丹のタクシー係もボクらを乗せたタクシーの運転手もいる。そのタクシーナンバーも知っている。はっきりとした時刻も判明しているのだから、乗車拒否運転手には言い訳のチャンスもない。
「では、後程ご報告をいたします」
 電話は切れた。最初のやりとりはギクシャクしたが、全般的に冷静かつ論理的、丁寧な対応だった。
 しばらくしてセンターから電話があった。
「会社の責任者と運転手がセンターにきて謝罪していきました。運転手は以前、犬にかまれたことがあり、反射的に乗車拒否をし、後で盲導犬と気がついて、大変申し訳ないことをして、しきりに反省しておりました。どうなさいますか」
「それは単なる言い訳にしか過ぎません。第一に二種免許取得者として、瞬時に盲導犬と一般の犬を見分けることができなくてはいけません。その時点でこの運転手は免許停止でしょう。それに、たとえ大型犬ではあっても、盲導犬は盲人の体の一部です。ですから、盲導犬を拒否することはボクの人間としての存在も否定することになります。つまり人権侵害に当たるわけです。これは憲法の人権の理念に抵触します。どんな言い訳をしようと、これは許される行為ではありません」
「おっしゃる通りです。私も言い訳の余地はないと判断いたします。今後、このようなことが二度と起きないよう指導をいたしますが、この会社からも謝罪にいかせましょうか」
 謝罪にくるということは、菓子箱のひとつも持参したいとのことだろうが、この手の物で一見落着にする日本的慣習にボクは絶対なじまない。
「その必要はありません。今後も立場の弱い人々への配慮を忘れないようにしていただければ、それだけで充分です。適切なご処置に感謝いたします」
 ボクは思った通りのことを伝えた。センターの対処は納得のいくものだった。それにしても、まだまだタクシーで不愉快なことが起きる。つい先日も、たまたまチェッカーグループのタクシーに乗らなければならぬことになった。盲導犬を拒否はしなかったものの、その運転手は返事に
「あー、おー、うー」
としか言葉を発しなかった。チェッカーはよほど犬が嫌いらしい。

 さて、もしもこのホームページをチェッカーグループの誰かさんが読んでいて、ご意見があるなら寄せてほしい。消費者は今、インターネットというツールを得て、みんな饒舌になり始めているのだ。悪質な業者は社会から駆逐されなければならない。   2001/07/12
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