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原稿用紙プライベート盲導犬アリーナ日記
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◆ 我が家のネコドモ
 我が家には猫がいる。それも2匹。オスのキロンとメスのナンナンである。どちらも、野良っていたのを拾ってきた。
 キロンはコボちゃんと散歩中だった盲導犬のアリーナに救われた。草原で瀕死の所をアリーナに発見されたのだ。真っ黒に汚れ、両目は潰れ、目やにだらけ。すっかり痩せて、今にも死にそうだった。で、コボちゃんが我が家へ連れてきたというわけだ。
「そうか、両目とも見えないんだね。人事、いや、猫事とは思えないな」
 ボクはその哀れな猫を家にあげることに同意した。コボちゃんがすぐに洗ってやる。すると目やにが落ちて、片目があいた。
 獣医に診てもらう。治療しても、九分九厘は助からないだろう、といわれた。それでも助けてくれというと、獣医は1本1万円の注射をバシバシと打った。そしてキロンは九死に一生を得たのである。ただし、それが注射のおかげなのか、猫本来の自然治癒力のせいなのかははっきりとしない。
 それ以来キロンは元気だ。ケロリとして、、
「オイラはこの家で生まれたんだ」
というような顔をして暮らしている。
 ナンナンもアリーナに助けられた。以前の飼い主に捨てられて、遊歩道で野良猫家業をやっていた。そこをボクと散歩中の盲導犬アリーナに出会う運命となる。ナンナンはアリーナの優しさに引かれ、ボクとアリーナについてきた。そして、いつか我が家に住み着いたのである。


◆ ナンナンのパフォーマンス
 ナンナンが我が家のメンバーになるには時間がかかった。飼い主に裏切られた思いが強いのか、神経質で用心深かった。けれども人間を慕う気持ちも強く、どこまでもボクやアリーナのあとをついてくる。
 一度など、遊歩道を横切る広い道路の横断歩道を渡り、縄張りとは思えない遠い場所までついてきた。
「ナーンナーン」
と鳴きながらついてくる。ナンナンという名前はこのときつけられた。
 こんなこともあった。ナンナンはコボちゃんの目の前で見事な技を披露したのである。真っ直ぐな木の幹を一直線に駆け上がり、幹の途中で空中回転すると、そのまま一気に駆け降りたのである。まるで忍者のようだった、とコボちゃんはいう。
「きっと、あたしにも売り込みをかけたのね」
 で、ナンナンの作戦は成功し、我が家でのポジションをゲットした、ってわけなのだ。


◆ お互いの平和と幸福のために
 ナンナンは以前の飼い主から既に避妊手術を受けていた。けれども、キロンは元気なタマタマを保有したまんまである。健康で実によろしいことなのだが、人間の飼い主としては、将来重大な事態に至る懸念におののいていた。それが発情期のおしっこの心配である。雄猫は時期になるとカーテンや壁紙に独特の匂いのある尿をスプレーする。そして、これを一度やられると、二度と匂いは消えない。梅雨などの季節になると、どこからともなくやってくる不可思議な香りに悩まされることになるのだ。
 そんなことになってはたまらない。そこでキロンもタマヌキの洗礼を受けたのである。 続く


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