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原稿用紙プライベート盲導犬アリーナ日記
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■ アルルレポート 盲導犬の真似をした

◆ もうすぐ4歳
 2004年10月3日に生まれたアルルはもうすぐ4歳。
アリーナが星になる一週間前にこの世界にデビューしたわけである。アリーナを失った翌年、ボクが旭川医大付属病院で大手術を受け、見事に成功して退院してから1ヶ月と少しして、アルルは我が家の家族となった。
 中部盲導犬協会からやってきたのは、2005年10月16日のことであるから、アルルは1歳になったばかり。盲導犬の訓練を受けることなく、ボクとコボちゃんの娘になったわけだ。アリーナを失った悲しみがあまりに大きくて、それを癒してくれるのはやはりラブラドールしかいない。そして、クロラブのアルル、盲導犬になれなかったブラックラブラドールレトリバー・ショートレッグスのアルルが見事にボクとコボちゃんの心の隙間を埋めてくれた。


◆ ユニークなアルル
「ワンちゃん、何歳ですか?」
 散歩中のアルルは、赤ん坊のブラックラブに間違えられる。それはアルルがブラックラブラドールレトリバー・ショートレッグスという新種名でネーミングされるくらい短足だからだ。
「わあ、可愛い。でも、足、短い」
 女子高生に、こうもいわれる。アルルの後ろ足は本当に短く、腹這いになっているときなど、後ろから見ると、まるでアザラシかアシカのようだとコボちゃんがいう。そうなのだ。後ろ足が短いから、いつまでたっても赤ん坊のように腹這いで遊ぶ。4歳といえば、イヌの大人であるはずなのに、アルルはいつまでも赤ん坊のままでいるつもりなのだ。

◆ ボクにだけは優しいアルル
 中部盲導犬協会から我が家にきたばかりのアルルは、もしかして盲導犬かと思われるくらい、おとなしくて静かだった。ところが、すぐにかぶっていたネコの毛皮をはぎとり、むき出しのイヌになった。
 軍団のイヌたちに吠えられてからは、自分からも吠えるようになってしまった。
「てやんでえ!」
 てな調子で、他のワンちゃんに吠えることもある。けれども、ケンカをするわけではない。
アルルはやんちゃではあっても、凶暴ではないのだ。
 けれども、家内のコボちゃんに、ドシンと前足で体当たりはするし、乱暴に遊ぶ。体重47キロのドーベルマンのボーイフレンド、ペールにも、全速力で体当たりする。けれども、さすがはドーベルマン。25キロのアルルの肉弾攻撃にも、ぐらりともせず、アルルの相手をしてくれる。アルルは意外にもてるのだ。
 さて、このアルル、盲目のボクには決して乱暴をしない。小さな子たちにすると同じく、すぐ近くにいても、静かに行動する。おやつをあげるときなど、指でビスケットをかくしてしまうと、クチビルとベロだけで、ボクの指を傷つけないよう、優しく優しく、自分の口へ取り入れる。ここはやはり血統なのだろう。確かにアルルには盲導犬の血液が流れているのだ。

◆ アルルの散歩
 このアルルと散歩をするとき、ずっとボクは盲導犬のアリーナと歩くときのように、言葉をかけて、正しく歩くように訓練を続けている。ぴたりと横につけて、まっすぐ静かに歩かせる。けれども、信用はできないから、いつもコボちゃんの肩につかまっての歩行ではあった。その用心は当たり前。アルルは盲導犬の訓練をまるで受けてはいないのだ。

◆ アルルが盲導犬の真似をした
 ところが、先週の金曜日の夜、人工透析からの帰り道、いつもは駐車場の敷地内だけの盲導犬ごっこを、外の道路でやってみた。それまでは、ほんの3メートルか5メートルだけのガイドだったのを、長距離、盲導犬ごっこをしてみたのだ。パイロットはコボちゃん。そのあとを、アルルとついていく。
「まっすぐ」
とか、
「ゆっくり」
とか声をかけ、あたかも盲導犬がするように、ボクをリードさせたのた。すると、どうだろう。アルルは道路をひたすらまっすぐ、ほとんど盲導犬のアリーナのしたように、ボクを見事にガイドしたのだ。
「アルル、とっても嬉しそう」
 アルルを見て、コボちゃんも嬉しそうに声をあげる。
ブラックラブラドールレトリバー・ショートレッグスのアルルは、尻尾をぶんぶん振って、ひたすらひたすら歩いている。
「そう、そう。よおし、よし!」
 声をかけると、本当に嬉々として歩いている。やはりアルルは盲導犬になりたかったのだ。ボクは改めてラブラドールの優秀さに感動した。盲目の主人に貢献したい。
やんちゃなアルルの内部にだって、そんな使命感が燃えていたのだ。2008/09/29

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