◆ 戦車
エム ナマエのおもちゃ箱
ぼくが戦車を作ったら、すごいぞ。どんなやつにも負けないボディー。砲塔には世界最大の二〇〇ミリ戦車砲とレーザーガン。頑丈なキャタピラは何でもふみつぶす。スピードだって、高速道路をらくらく走れる時速ひゃくキロ。ぼくはそいつで町へくり出す。
「ガラガラ、ゴロゴロ」
すごい音がして、暴走族も逃げ出すよ。大通りを走ったら、横道に突入する。曲り角に迷惑駐車の自動車を、
「バリバリ、ボコボコ」
ペシャンコにしてやるんだ。これで、子供の飛び出し事故がなくなるぞ。ああ、気持ちいい。
「ベキッ、ガッチャン、ペシャリ」
歩道にはみ出しているチカチカギラギラの看板を、どんどんひきつぶす。これで、歩道も広くなる。
「あっ、パチンコ屋だ。ほうら、あった、あった。」
歩道から車道にまで、ずらり並んだ自転車の列。これじゃ、車椅子の人どころか、誰だって歩けやしない。うば車のお母さんは、どうすりゃいいんだ。ええい、みんな掃除してやれ。
「グシャ、パキ、ガッチャン」
そうら、すっきりした。
横道が終ったら駅前広場だ。わあ、すごい。まるで、自転車の墓場みたい。いつから放置してあるのか、真っ赤にさびたやつもいる。広場は自転車でうまってる。その間を人がカニさんみたいに、はって行く。ええい! みんな、ペッシャンコ。ぼくの戦車はロードローラーみたいに広場をまったいらにして行く。ほら、これで白い杖の人が元気にしゃかしゃか歩くよ。よかったな。
さあ、夜になった。子供達よ、ついて来い。これから、二〇〇ミリ戦車砲の威力を見せてやる。街外れの川原に出た。みんな、座って輪になってごらん。 大木みたいな砲身が、グググーンと空を向く。
「発射!」
「ドーン! ドーン! パチパチパチ」
ほうら、花火だよ。きれいだろう。レーザービームが火花の間をピカピカ走る。子供達は大喜び。すごいだろ、ぼくの戦車。
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